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PFASとは何か? 何が問題なのか?PFASリスクの基礎知識(1)(1/2 ページ)

PFASの基礎知識やリスクなどを紹介する本連載。第1回はPFASの概要やPFOSやPFOAの問題とPFAS問題の違いなどについて説明する。

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PFASとは何か?

 PFAS(ピーファス)とは「ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物」の総称のことである。PFASは、アルキル基(炭化水素)の水素の代わりにフッ素が結合している構造を基本としている。アルキル基の水素の全部がフッ素で置換されたものを「ペルフルオロアルキル化合物」、一部がフッ素で置換されたものが「ポリフルオロアルキル化合物」となる。基本構造である炭素とフッ素の結合は非常に強力であるため、以下のような極めて有用な化学的性質を持っている。

  • 耐熱性、耐薬品性、耐候性
  • 撥水性、撥油性、滑り性
  • 電気絶縁性

 これらの優れた特性から、現代社会のさまざまな分野で使用されている。例えば、工業用途では、半導体製造や自動車製造、金属メッキ、泡消火剤などに活用されている。身近な製品では、フライパンのコーティング、防水スプレー、太陽光パネル、医療機器などにも利用されている。

 驚くべきことに「PFASとは何か」という定義は1つにまとまっておらず、複数の見解がある。これらの中でも、経済協力開発機構(OECD)が2021年に公表したPFASの定義「少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチル又はメチレン基(フッ素が結合している炭素原子にH、Cl、Br、I原子が結合していないもの)を含むフッ素化物質」に従うのが通常である。これらに含まれる物質は1万種類以上に及ぶとされているが、具体的な物質のリストは示されていない。そこで、まずは3つのグループに分けると理解しやすい。

  1. ペルフルオロアルキル化合物
  2. ポリフルオロアルキル化合物
  3. フッ素樹脂

 1のペルフルオロアルキル化合物は最もリスクが懸念されるグループで、後述するペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)が入る。水に溶けやすいのが特徴で、水中から検出されやすくなっている。PFOSやPFOA以外にも、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)やPFCA(ペルフルオロカルボン酸)類などについてもリスクが懸念されている。

 2のポリフルオロアルキル化合物に含まれる物質は、1の次に懸念されてきたグループである。ここに含まれるフルオロテロマーというグループはPFOSやPFOAなどよりも高分子であり、環境中で分解してペルフルオロアルキル化合物に変化することが指摘されている。ポリフルオロアルキル化合物自体に問題があるというよりは分解物が問題となる。

 3のフッ素樹脂はフライパンのコーティングをはじめ、さまざまなコーティング用途などに使用されている。フッ素樹脂はポリマーであるため、モノマーである1のペルフルオロアルキル化合物や2のポリフルオロアルキル化合物とは別の物質群であるが、OECDの定義に従うとPFASに含まれてしまう。これらは環境中で分解してペルフルオロアルキル化合物やポリフルオロアルキル化合物になることはない。水に溶けず、生体内での反応性もない(=毒性もない)ことが知られている。その反面、安定であることにより、環境中で難分解である特性を持つ。

PFOSとPFOAの概要

 PFOSとPFOAは、PFASの中の代表的な物質である。その構造を図1に示すが、いずれも8個の炭素原子を持っており、名称に含まれる「O」は数字の8(octa)に由来する。両者は骨格の末端に付いている官能基が異なり、PFOSはスルホン酸、PFOAはカルボン酸が結合している。

図1 PFOSとPFOAの化学構造
図1 PFOSとPFOAの化学構造[クリックで拡大]

 前述した優れた特性により、PFOSとPFOAは、半導体、金属メッキ、泡消火剤、フッ素樹脂製造の助剤、衣類やカーペットの防汚剤、紙の撥水剤などに使用されてきた。かつては毒性が低く便利な物質として重宝されてきたが、現在ではそのリスクが問題視されている。

 まず、環境中で分解しにくく長期間残留し(難分解性)、人間や生物の体内で蓄積しやすい性質(生物蓄積性)があることが判明した。また、ヒトを対象とする疫学研究においては、ジフテリアなどのワクチン抗体価の減少やコレステロール値の上昇などとの相関関係(因果関係とは限らない)が示されている。

 さらに、国際がん研究機関は発がん性ランクについて、PFOAをグループ1「ヒトに対して発がん性がある」に、PFOSをグループ2B「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」に分類するという結果を2023年に公表した。一方で日本の食品安全委員会は2024年に食品健康影響評価の評価書を公表したが、発がん性については情報が不十分とみなし評価には使われなかった。

 このような特性により、PFOSとPFOAともにストックホルム条約により国際的に製造/使用が規制されている。日本でも化審法に基づいてPFOSは2010年、PFOAは2021年に「第一種特定化学物質」に指定され、原則として製造/輸入が禁止された。現在、日本の水道水や環境水では、ヒトへの健康影響を考慮し、PFOSとPFOAの合計値で50ng/L以下という暫定的な目標値/指針値が2020年に設定され、2026年4月からは正式に水道水質基準に位置付けられた。

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