PFASとは何か? 何が問題なのか?:PFASリスクの基礎知識(1)(2/2 ページ)
PFASの基礎知識やリスクなどを紹介する本連載。第1回はPFASの概要やPFOSやPFOAの問題とPFAS問題の違いなどについて説明する。
PFOS/PFOA問題からPFAS問題へ
PFOSやPFOAが使用されなくなると、よく似た別の物質に代替が進んだ。これにより、PFOSやPFOAの問題からPFASというより大きな化学物質のグループの問題に変わってきた。欧州ではリスク評価を個別に実施することなく、1万種以上といわれるPFASを原則として一律に製造、使用、販売を禁止しようとする規制の動きが進んでいる。
このような予防原則に基づく一括規制にはさまざまな問題がある。特にポリマーであるフッ素樹脂のように、生物に無害と見なされるものまでPFASとして一律規制されることで、多種類の有用な製品の製造や寿命、安全性に大きな影響が出ることが懸念されている。
また、PFASの代替物質の性能不足により、製品寿命の短縮やエネルギー効率の低下を招き、結果として地球温暖化対策に逆行してしまう。さらに、代替物質によるリスクがPFASのリスクよりも低いという根拠もない。すなわち、PFASの使用禁止によってわれわれの生活が安全になるかどうかは現時点では分からないのだ。
このように、PFOSやPFOAの問題からPFAS問題へと、問題の性質そのものが変わってきたのである。PFOSやPFOAについては既に法規制が完了しており、地下水などに残留している過去の汚染への対処が現在の主な課題となっている。これに対してPFASについては現在進行形であり、リスクが不明なものも含めてPFAS全体を一律に禁止しようとする動きを巡る問題となっている。
これにより、社会に不可欠な有用物質まで排除されかねないという未来の懸念が生まれている。つまり、未知のリスクと有用性/利便性のバランスをどう取るかという、より広範囲で複雑な社会問題へと変化したと言えよう。
ところが、最近の日本のニュースの多くは見出しに「PFAS」という言葉を使いながらも、実際にはPFOSやPFOAの残留問題を報じていることがほとんどである。日本ではPFOSやPFOAの問題とPFASの問題との違いが認識されていないのか、それともトレンドに乗って注目を集めるためにわざとPFASという言葉を使っているのかのどちらかである。
世の中の注目度の変遷を調べるために、Google trendsというツールを用いて、検索エンジンのGoogleにおける2006〜2025年の20年間にわたる検索数の推移を調べた結果を図2に示す。PFOSは国内外で規制が進んだ2008年前後にピークが見られるが、2022年頃からはPFASの検索数が大きく伸びている。
日本のニュースでは、タイトルでは「PFAS」とくくりながらも内容はPFOSやPFOAの問題ばかりを取り上げ、より重要なPFAS問題はほとんど取り上げていない。これでは「全てのPFAS=危険」というイメージが定着してしまい、問題のないものも含めて全てのPFASを禁止しようという世論が誘導されてしまう懸念がある。このように現状では、PFOSやPFOAの問題とPFASの問題を混同することで、本質的な問題が見えにくくなってしまっていると言えよう。
本記事では連載の初回として、「PFASとは何か? 何が問題なのか?」について概要を解説した。次回は、本記事でも取り上げた欧州におけるPFAS一括規制の内容とその影響についてさらに具体的に解説する。
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