島津製作所がPFAS分析向け高速液体クロマトグラフ質量分析計を発売:研究開発の最前線
島津製作所は、トリプル四重極型高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8065XE」を発売した。従来機の基本性能を継承しつつ、感度と頑健性を高めた。特に需要が急拡大するPFAS分析市場向けに展開する計画だ。
島津製作所は2025年8月7日、トリプル四重極型高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8065XE」を同日に発売したと発表した。従来機の基本性能を継承しつつ、感度と頑健性を高めた。価格は税込7150万円〜で、発売後1年間に国内外で70台の販売を目指す。特に需要が急拡大するPFAS分析市場向けに展開する計画だ。
LCMS-8065XEは、従来機で採用した「IonFocus」機能を搭載。流体解析や電場解析の技術を使ってイオンを効率的に質量分析計に取り込むことで、感度と頑健性の向上を図っている。さらに、試料を噴出するノズル径を絞ってスプレーの広がりを抑えることで、イオンの取り込み効率を高める新設計「StreamFocus」をESIイオン源に採用。入口レンズ径拡大とレンズ枚数追加、新型コリジョンセルの導入により透過イオン量を増加させ、感度を高めた。
また同社は分析計だけでなく、分析メソッドや解析ソフト、消耗品などを幅広くラインアップしている。それらをトータルソリューション「FluoroSuite」として、顧客ごとのPFAS分析ニーズに対応できるよう提案していく考えだ。
装置の状態を自動診断するAI(人工知能)機能「パフォーマンス・コンシェルジュ」や、使用状況をモニタリングして自動シャットダウンすることで消費電力を約3割削減する「エコロジーモード」も搭載。消費電力を低減し、運用効率を向上する。
PFAS(有機フッ素化合物)は自然環境では分解されにくく環境中に残留する。1万種以上あるPFASの中でも、特にPFOSやPFOAは健康リスクを高めると指摘されている。アメリカやEUで規制が強化され、飲料水中ではppt(1兆分の1)レベルの検出が求められるなど、高感度分析機器への需要が急増している。
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