富士フイルムがPFASフリーArF液浸レジストを開発 28nmの金属配線に対応:材料技術
富士フイルムは、先端半導体の製造プロセス向け環境配慮型材料として、有機フッ素化合物(PFAS)不使用のネガ型ArF液浸レジストを開発した。
富士フイルムは2025年7月15日、先端半導体の製造プロセス向け環境配慮型材料として、有機フッ素化合物(PFAS)不使用のネガ型ArF(フッ化アルゴン)液浸レジストを開発したと発表した。
現在は顧客での評価を推進
現在普及しているArF液浸露光向けのフォトレジストは、微細な回路パターンの描画に必要な酸を反応をさせたり、ウエハー上に残った水滴による欠陥を抑制するためにレジスト表面に撥水性を持たせたりする目的で、PFASが利用されている。一方、環境や生態系への影響が懸念されているため、PFAS使用規制の動きが進んでおり、PFASを利用しない新規材料の開発が求められている。
そこで、富士フイルムは高純度有機溶剤を活用したネガ型現像プロセスの開発で培った知見を生かし、PFASを利用せずに微細な回路の形成とパターンの欠陥抑制を実現するネガ型ArF液浸レジストを開発した。
このネガ型ArF液浸レジストは、富士フイルムが銀塩写真の研究開発で培った機能性分子の設計技術に加え、フォトレジストなどの半導体材料の開発で得られた分子設計や有機合成、処方、解析の技術が生かされている。これらにより、回路パターンの形成における優れた酸反応効率や、ArF液浸露光時の水残りを減らす高い撥水性を実現しており、バラツキが少ない微細な回路パターンを形成する。
同社は、ベルギーで最先端半導体プロセス技術などの研究を行う機関であるimecとともに、今回のネガ型ArF液浸レジストの性能を評価した。その結果、28nmの微細な金属配線を、高い歩留まりとスループットで形成できることを確かめた。現在は顧客での評価を進めている。
なお、富士フイルムはこれまでも、人体や環境への悪影響のリスクが懸念される物質の削減と代替化に取り組んでおり、ネガ型現像プロセス用の現像液では、安全性の高い高純度有機溶剤を用いた「NTI現像液」を世界で初めて開発した(同社調べ)。また、半導体製造技術「ナノインプリントリソグラフィ」に適合する半導体材料として、PFASを含まないナノインプリントレジストも2024年に発売。レジストPFASフリー化の技術やノウハウを、極端紫外線(EUV)向けをはじめとした他の先端レジストにも適用することで、先端レジストのPFASフリー化を進めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
富士フイルムが200億円をかけ国内拠点で半導体材料向け設備を増強
富士フイルムは、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズの静岡拠点と大分拠点で半導体材料向け設備の増強を行う。設備投資の総額は約200億円だ。富士フイルムがCMPスラリーの国内生産を熊本拠点でスタート
富士フイルムは、熊本拠点(熊本県菊陽町)で半導体製造プロセスの基幹材料であるCMPスラリーの生産設備を本格稼働させたと発表した。富士フイルムがベルギーの生産拠点にCMPスラリーの生産設備を導入
富士フイルムは、半導体材料事業をさらに拡大するため、ベルギーの生産拠点において、先端半導体材料であるCMPスラリーの生産設備を新たに導入するとともに、フォトリソ周辺材料の既存設備を増強する。富士フイルムが熊本に先端半導体材料の生産設備を導入、2025年稼働へ
富士フイルムは富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング 九州エリアにおいて、約60億円を投資して先端半導体材料の生産設備を導入する。富士フイルムがCMPスラリーの熊本工場を増強、生産能力を約3割拡大
富士フイルムは、半導体材料事業をさらに拡大するため、熊本県菊陽町に立地する生産拠点に先端半導体材料であるCMPスラリーの生産設備を増強する。