検索
ニュース

脱銅箔、リチウムイオン電池セルを10%軽量化する新フィルム材料技術

リチウムイオン電池の軽量化を加速させる新技術を東レが開発した。負極環境下で求められる4つの厳しい特性を全てクリアした世界初の樹脂フィルム基材だ。銅箔をこのフィルムに置き換えることでリチウムイオン電池セルの約10%軽量化を実現できる。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 東レは2026年7月29日、集電体材料に求められる4特性(酸化/還元耐性、金属密着性、機械特性、熱特性)を全て満たす負極集電体用フィルムを世界で初めて(同社調べ)開発したと発表した。集電体用フィルムとは、集電体に用いられる樹脂フィルム基材を指す。

 同フィルムにより、リチウムイオン電池の集電体を従来の銅箔から、樹脂フィルムを基材とするフィルム集電体に代替することが可能となる。なお、同フィルム適用の集電体で、銅箔と同等の電池性能を実証していることに加えて、量産機での製膜も実現している。顧客向けのサンプル提供も開始している。同フィルムは、リチウムイオン電池の軽量化に貢献すると見られている。

標準グレードを量産機で広幅製膜することに成功

 集電体とは、二次電池の正極/負極において、活物質層と接して配置され、電極内で生じた電流を効率よく集めて外部回路に取り出す役割を果たす導電部材のことだ。リチウムイオン電池の集電体としては、正極にアルミ箔、負極に銅箔を用いるのが一般的とされている。

 一方、リチウムイオン電池のさらなる高エネルギー密度化に伴って軽量化ニーズが高まる中、樹脂フィルム基材に極薄の銅層を設けたフィルム集電体の開発が進んでいる。フィルム集電体は、樹脂フィルム基材の表面に極薄金属層(正極:アルミ、負極:銅)を形成した複合構造の集電体で、従来の金属箔と比較して軽量/薄型化に優れる。

従来負極集電体(銅箔)とフィルム集電体の構造比較
従来負極集電体(銅箔)とフィルム集電体の構造比較[クリックで拡大] 出所:東レ

 正極集電体用フィルムの基材として用いられているのがPETフィルムである。しかし、還元性の強い負極では劣化してしまうことが課題だった。また、別の樹脂フィルム基材についても、酸化/還元耐性、金属密着性、機械特性、熱特性を同時に満たすものは存在しなかった。

 そこで同社は、独自のポリマーアロイを用いた高分子設計技術とフィルム製膜技術による高次構造制御を駆使し、上記の4特性を満たす新たな樹脂フィルム基材を開発した。ポリマーアロイとは、2種以上の異なる高分子を複合化することにより、単一樹脂では実現困難な特性を発現させた複合材料だ。

銅箔集電体および各種フィルム集電体の負極適用時の特性比較
銅箔集電体および各種フィルム集電体の負極適用時の特性比較[クリックで拡大] 出所:東レ

 今回の樹脂フィルム基材を適用した負極用フィルム集電体は、耐還元性に優れ、銅層との高い密着性に加え、銅箔と同等の強度と低熱収縮性を備え、実電池評価で従来の銅箔集電体と同等の性能を示した。

 さらに、同フィルムの適用により、従来の銅箔に比べ、集電体の重量を約50〜60%削減でき、電池セルでも約10%の軽量化が見込まれる。重量エネルギー密度向上に伴い、モバイル機器の駆動時間延長や、ドローン/電気自動車(EV)の電力消費効率向上、航続距離延伸が可能となる。

実電池サイクル試験における容量維持率の推移(社内評価、単層ラミネートセル、電池容量:30mAh)
実電池サイクル試験における容量維持率の推移(社内評価、単層ラミネートセル、電池容量:30mAh)[クリックで拡大] 出所:東レ

 加えて、軽量化で生じた重量余力を生かして活物質を増量することで、同社の試算条件では最大約10%のEV走行距離延長の可能性があることも分かっている。この試算条件では、フィルム化による軽量化で生じた重量余力を、正極と負極の容量バランスを示すN/P比を一定に維持したまま、正極/負極活物質および電解液の増量に充当したものとして算出した。また、需要が逼迫(ひっぱく)する銅の使用量を削減し、材料コストの安定化にも貢献する。

 同社は既に、同フィルムの標準グレード(厚さ4.5μm)を量産機で広幅製膜することに成功している。顧客へのサンプル提供も開始しており、さらなる薄膜化も検討中だ。今後は、モバイル機器やドローン、eVTOL(電気を動力源として垂直に離着陸が可能な航空機の総称)などの中小型電池での実用化を進めるとともに、EVやエネルギー貯蔵装置(ESS)など大型電池への適用も視野に入れている。

⇒その他の「材料技術」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る