1μm以下の極薄半導体チップを高スループットで実装、東レエンジが技術開発:FAニュース
東レエンジニアリングは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業において、極薄半導体チップを高スループットで実装する技術を開発した。
東レエンジニアリングは2025年8月28日、オンラインで記者会見を開き、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業において開発した極薄チップの実装技術について説明した。
先端半導体では、さらなる高性能化、低電力化を実現するために、半導体チップの極薄化への要求が高まっており、極薄のHBM(広帯域メモリ)やデータなどをやりとりするブリッジチップ、さらに次世代集席回路などのハンドリングが求められている。
従来、これら半導体チップをダイシングテープから分離させる方法として、針状のピンで突き上げて取り出すニードルピックやテレスコピック、スライダーといった方式が用いられていたが、厚み20μm以下になるとハンドリング時の歩留まりが大幅に低下することが課題となっていた。
今回、東レエンジニアリングは、NEDOの助成事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」で、高精度レーザー加工位置制御技術と、レーザー転写プロセスに最適化したレーザー光学系を開発した。LEDをディスプレ基板に実装する際などに使用されるレーザー転写技術を応用したもので、東レエンジニアリングでは「スキャン方式」と呼んでいる。
レーザー転写では、ダイシングテープやガラス基板などのキャリア基板にレーザーを照射して接着剤に反応を起こし、チップを剥離させてキャッチ基板に転写する。従来はマイクロLEDやミニLEDのレーザー転写において主に1ショットごとに1個ずつチップを転写する「1by1方式」が用いていたが、新しいスキャン方式では微小なレーザーをチップの端部から順に照射する。これにより、極薄チップを高い歩留まりでキャリア基板から剥離(はくり)し、キャッチ基板に転写できるようになった。
「今までの方式では大きなレーザーを一括で当てると、テープ部分の変形が大きくなり、チップに与えるダメージも大きくなってしまう。チップより小さなレーザーを使ってチップを少しずつ剥離させることで、厚みが1μm以下の極薄チップでもダメージを低く抑えて転写させることが可能になった」(東レエンジニアリング 開発部門開発部 主任技師の岡田達弥氏)
これによって、先端半導体に使用される厚み20μm以下の半導体チップや、次世代光集積回路に使用される厚み1μm以下の化合物チップを、量産時に求められる精度を保ちながら、従来比10倍以上の効率で生産することが可能となった。
開発したレーザー転写技術を実証するため、チップサイズ5mm×5mm、厚み10μmの半導体チップを試作し、実証試験によって精度±2μm(3σ)で転写することに成功。転写したチップの外観検査や抗折強度測定によって、チップに有意なダメージがないことも確認できたという。
チップサイズ0.15mm×0.70mm、厚み1μm以下のInP(インジウムリン化合物)やTFLN(薄膜ニオブ酸リチウムチップ)など化合物チップの転写とシリコン基板への接合に成功し、化合物チップの実装プロセスへの適応性を実証した。
東レエンジニアリングでは、先端半導体パッケージの量産が始まる2030年頃の適用を目標に、ユーザーと製品開発に取り組んでいく。
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