「AIに期待」65%も「明確な成果」16%、製造業の多くがPoC止まりの理由は:製造マネジメントニュース
primeNumberが「AI・データ活用実態調査 2026」を公開した。AIへの高い期待に対し、明確な成果を得た企業は16.4%にとどまる。成果を左右する原因や、製造業でPoC止まりが多発する構造的課題を同社に聞いた。
生成AI(人工知能)の急速な普及や、自律的に業務を遂行するAIエージェントの登場により、企業におけるAIやデータ活用への関心は高まり続けている。しかし、多くの企業が積極的な投資を行い、業務への導入を進めているものの、実際の成果創出やビジネスへの貢献度という観点では、企業間にばらつきが生じているのが現状である。
こうした背景を受け、primeNumberは2026年7月17日、「AI・データ活用実態調査 2026」を公開した。同調査では、AI/データ活用に関わる373人を対象に、AI活用への期待やその成果について聞いた。発表に際し、primeNumber 代表取締役CEOの田邊雄樹氏と同 AI Deployment & Strategy Officerの小橋淳一氏が取材に応じた。
「AIへの期待値」64.9%に対し、「明確な成果」は16.4%
調査結果によると、AIやデータ活用によって自社のビジネスに「劇的な変革」と「大きな改善」を期待する割合は、全体で64.9%に達した。設問における「劇的な変革」はビジネスモデル自体の変化や競合優位性の確立、「大きな改善」は既存事業の売り上げ向上や大幅なコスト削減と定義されており、多くの企業がAIに高いレベルのビジネス貢献を求めていることが分かる。
一方で、勤務先においてAIを活用した結果、「明確な成果が得られている」と回答した割合は全体で16.4%にとどまった。全体の約5割は「限定的な成果」と回答した。
期待と成果のギャップが生まれる背景について、田邊氏は「目前の業務効率化など、個人の作業効率向上にはAIは確実に寄与している。しかし、経営や組織全体の変革といった『組織としての力』にまで昇華できているかという点に関しては、多くの企業がまだこれからという段階にある」と指摘した。
この成果の有無を分ける要因として注目されているのが、データ基盤の整備状況である。実際に、「明確な成果が得られている」と回答した企業のうち、「データ基盤を全社で統合済み」と答えた割合は26.2%となり、成果が得られていないと回答した企業と比べて2倍以上の水準を示した。全体で「データ基盤を全社統合できている」と回答した企業は13.9%にとどまっている。
また、今後12カ月の優先投資領域として「生成AIやエージェント型AIの開発・運用」を挙げた回答者のうち、60.5%は「データ統合・パイプライン整備」「DWH・データレイク強化」「データカタログ・メタデータ管理」のいずれも優先投資先に選んでいなかった。「AIアプリケーションへの投資が先行し、成果と強い因果関係を持つデータ基盤の整備が後回しにされている状況である」と小橋氏は指摘した。
製造業の「AIの導入段階」は「PoC・実証実験」が26.2%
製造業(103件)と非製造業(270件)の調査データを比較すると、製造業におけるAI/データ活用の独自の傾向が見えてくる。今後12カ月の優先投資先として「業務現場への浸透」を挙げた割合は、製造業が27.2%で非製造業(22.6%)を上回り、工場のラインや生産現場などへのAI導入に対して高い意欲を持っていることが分かる。しかし、実際のAI導入段階については、「PoC・実証実験」の段階にとどまっている割合が、非製造業の15.9%に対して製造業は26.2%と10ポイント以上も高い結果となった。現場への投資意欲は高いものの、実証実験や限定的な利用から本格的な運用へと進めず、足踏み状態が続いている現状を示している。
なぜ製造業のAI活用はPoC(概念実証)段階で止まってしまうのか。田邊氏は「製造業のAI導入が進まない理由は、現場の意欲の低さではなく、製造業ならではのデータ構造と環境の難しさにある」と指摘する。
非製造業で扱われる主なデータがテキストやドキュメントなどデジタル化しやすいものであるのに対し、製造業の現場では扱われる情報の性質が異なる。「製造業では、現場の物理的な『モノ』や、職人の暗黙知、ベテランの長年の経験といった、データ化すること自体が難しい定性的な情報が数多く存在する。さらに、工場ごとにオンプレミス環境でデータが分断されているケースも少なくない」(小橋氏)。
このように、広範囲かつ複雑に散らばったデータをデジタル化し、集約してデータ基盤として整えること自体の難易度が高い。その結果、データ基盤の構築に多くの時間がかかり、AIを活用して組織的な成果を生み出す一歩手前の段階で滞留してしまう企業が多いと、両氏は分析した。
1〜3カ月で定型業務を自動化、既存資産を生かすGDM提唱
primeNumberは、データとAIを企業の成長エンジンへと進化させる事業を展開するデータテクノロジーカンパニーだ。同社は、データ基盤の未整備によってAI活用の成果が頭打ちになることを回避するため、「Generative Data Management(GDM)」という考え方を提唱している。これは、データの取り込みや品質管理、メタデータ整備といった、従来は人手を要していたデータ基盤の継続的な運用にAIを取り入れ、自律的に進化し続ける仕組みを構築するアプローチだ。
GDMを進めるための手法として、既存のシステムやデータ環境を総入れ替えするのではなく、今ある資産を生かすAIエージェントの構築支援を進めている。「社内に散在する図面や報告書などのテキストデータをネットワーク化して整理することで、熟練者に依存していたトラブルの原因特定や、PC上での定型業務をAIエージェントに置き換えることができる。規模にもよるが、これまでの事例では1〜3カ月での業務の自動化やサポートが可能だ」(小橋氏)。
AIの価値は、信頼できるデータと継続的に運用できる仕組みという「根拠基盤」があって初めて最大化されると両氏は語る。田邊氏は、「ツールを提供するだけでなく、データ基盤の整備からAIエージェントの構築までを伴走支援することで、企業のAI活用を一過性のものに終わらせず、持続的な競争力へとつなげていきたい」と今後の展望を述べた。
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