「AIによる業務効率化」だけで満足する企業が、サプライチェーン競争で負ける理由:MONOist AI Forum 2026(1/2 ページ)
MONOistが開催したセミナー「MONOist AI Forum 2026 本格実装フェーズに入った製造業AI、現場課題解決の最前線」において、ローランド・ベルガー パートナーの小野塚征志氏が登壇した。本稿ではその内容の一部を紹介する。
アイティメディアの産業向けメディアであるMONOistは、2026年6月3〜4日にライブ配信セミナー「MONOist AI Forum 2026 本格実装フェーズに入った製造業AI、現場課題解決の最前線」を開催した。本稿では、「AIによるサプライチェーンマネジメントの進化」と題してローランド・ベルガーの小野塚征志氏が行った講演の一部を紹介する。同講演内では先進事例を基に、AI(人工知能)を核とした次世代サプライチェーンマネジメントの在り方と、新たなプラットフォームビジネスの可能性を解説した。
小野塚氏が所属するローランド・ベルガーは、欧州を起点とするグローバル戦略コンサルティングファームだ。日本では1991年に事業活動を開始し、自動車や機械、食品/飲料、ヘルスケアなど各領域のエキスパートが、企業の意思決定を日々支援している。サプライチェーンやロジスティクス領域を担当する小野塚氏は、供給網全体の最適化から地政学的リスクへの対応、グローバル体制の構築など、多角的なコンサルティングを展開している。
N次サプライヤーまで見渡す「真の全体最適」とは
昨今の急速なAI(人工知能)の高度化により、サプライチェーンの最適化や持続可能性の確保に求められる、膨大なデータの適切な管理/解析が可能になった。
そもそもサプライチェーンとは、調達、生産、保管、輸送、販売に至る一連の供給連鎖である。それらを統括するSCM(サプライチェーンマネジメント)の本質は、部門ごとの「部門最適」ではなく、組織の垣根を越えた「全体最適」にある。たとえ特定のプロセス単体ではマイナスに見える施策であっても、全体を俯瞰(ふかん)した際のトータル収益を最大化させることがSCMの最大の肝となる。
SCMが対象とする領域は、自社内にとどまらない。調達先から納品先、そして両者をつなぐ「物流」に至るまで、全ステークホルダーにとっての最適解をシミュレーションすることが求められる。ここでとりわけ重要になるのが、直接取引のある1次サプライヤーだけでなく、2次、3次以降の「間接取引先(N次サプライヤー)」までを視野に入れたリスクマネジメントだ。N次サプライヤー1社の機能停止が、サプライチェーン全体の途絶を招くリスクがある。それらを理解し供給網を持続させる手段として、今まさにAIによる高度なデータ管理の必要性を高まっている。
多重シミュレーションこそ、AI活用の“本丸中の本丸”
AIは「自ら問いを立てる」「人間の感性を理解する」といった領域を苦手とする反面、大量のデータを高速かつ高精度に処理し、最適解を見いだすことにおいては高い能力を誇る。
小野塚氏はこの特性を踏まえ、「社内の部門の垣根、ひいては取引先や物流会社の最適解も踏まえて、どうするのが一番効率的でサステナブルなのかを考えさせることが、AIが最も得意とする領域だ」と説明した。まさに、多重構造のサプライチェーンを一気通貫でシミュレーションし、全体最適を導き出すことこそが、AI活用の“本丸中の本丸”だという。
一方で、ツールの早期導入だけで満足することへは警鐘を鳴らした。「優れた仕組みであれば競合も使う。ただ使っただけでは差別化が難しい」と指摘。AIを活用した上で、先行者としてデータを蓄積し、その結果を基に自社のビジネスモデルをどう強化し、競争力のある形にしていくかといった、一段上の戦略を検討することが重要になる。
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