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黄金期到来となるか―国家戦略のフードテック、日本の食産業の歴史的分岐点FOOMA JAPAN 2026(3/3 ページ)

「FOOMA JAPAN 2026」で行われたフードテックセッション「国家戦略としてのフードテックの可能性〜食産業のグローバル化」から、UnlocXの田中宏隆氏の講演やパネルディスカッションの模様を紹介する。

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バリューチェーンを再構築する企業たち

 続いて行われた基調パネル「食のバリューチェーンの再構築と新産業創造・事業機会の創出」では、実際に産業変革へ挑戦する企業の取り組みが紹介された。

 池田糖化工業の二井広平氏は、「日本の食産業は100兆円規模の巨大産業だが、その約98%以上は国内市場向けだ」と指摘。その上で、「日本の食文化や技術を世界へ展開できれば、自動車や半導体に匹敵する産業になる可能性がある」と語った。

 同社が目指しているのは、スタートアップや研究機関と食品業界を結ぶ“シードブリッジ”としての役割だ。二井氏は「ブランドを持たない立場だからこそ、新しい素材や技術を業界全体へ広げられる」と、一次産業から食品メーカー、物流、外食まで幅広いネットワークを持つ同社ならではの発想と強みを生かしていく構想を明かした。

 また、発酵/醸造設備メーカーのフジワラテクノアートは、「微生物インダストリー」の創出を掲げる。

 フジワラテクノアートの狩山昌弘氏は、「私たちは機械メーカーだが、単なる装置供給ではなく、微生物を活用した新しい価値創造に挑戦している」と説明。同社は国内のこうじ製造設備で約8割のシェアを持つ。その培養技術を応用し、食品だけでなく飼料やエネルギー、バイオ素材など幅広い分野での活用を進めているという。

 モデレーターを務めたUnlocXの田中氏はこうした取り組みについて、「個別企業ではなく、“群”として価値を創る発想が重要だ」と高く評価した。

池田糖化工業の二井広平氏フジワラテクノアートの狩山昌弘氏 池田糖化工業の二井広平氏(左)とフジワラテクノアートの狩山昌弘氏(右)

国家戦略として日本の成長を支える産業へ、

 セッションの最後に行われた共創パネルでは、農林水産省や経済産業省、外食や食品機械工業の業界団体の担当者らが登壇し、国家戦略としてのフードテック推進について議論した。

 農林水産省の朝比奈祥子氏は、「世界人口は2050年に100億人近くまで増加すると予測されている。一方で農地や収穫量の拡大には限界があり、持続的な食料供給が大きな課題になっている」と説明。その上で、「日本の食文化や発酵技術、食品機械などには世界に通用する強みがある。食料安全保障と経済成長の両立を目指していきたい」と語った。

 また、経済産業省の迫田章平氏は、農業や食品製造だけでなく、外食や観光まで含めた「食文化産業」という考え方を紹介し、「これまで食は農業や食品産業として語られることが多かったが、今後は日本の成長を支える産業として捉え直す必要がある」と話した。 さらに議論の終盤では、日本の食産業が持つ強みについても意見が交わされた。科学技術分野の教育/研究/創業支援を展開するリバネスの塚田周平氏は、「日本の強みは『おいしさ』『健康』『こだわり』の3つだ」と語った。「こだわり」の象徴例として、缶を開けるとレモンスライスが美しく浮かび上がるアルコール飲料を紹介し、「日本企業は見えない部分まで異常なほどこだわる。その文化こそが世界に通用する競争力だ」と語った。

 さらに、塚田氏は「海外ではまず見られない商品だが、日本では当たり前のように存在している。日本企業は見えない部分にまで異常なほどこだわる。その価値が十分に伝わっていないだけで、世界に誇れる競争力になり得る」と提言。モデレーターの田中氏も「『知のOS』や『食文化の価値』は、こうした日本ならではの細やかなモノづくりの精神にも支えられている」と賛同していた。

農林水産省の朝比奈祥子氏経済産業省の迫田章平氏リバネスの塚田周平氏 経済産業省の迫田章平氏(左)、農林水産省の朝比奈祥子氏(中央)、リバネスの塚田周平氏(右)

「ACT or ACT」――今こそ動く時

 今回のセッションでは、スタートアップ、地域企業、大企業、行政、研究機関など、多様なプレーヤーが一堂に会した。立場は違っても、共通していたのは「日本の食産業にはまだ大きな可能性が残されている」という認識だった。一方で、人口減少や生産者の高齢化、食料安全保障、気候変動といった課題は待ったなしの状況にある。

 田中氏はセッションの最後に「黄金期を迎えるか、静かな衰退に向かうかは私たち自身の選択だ」と語り、「ACT or ACT。もう動くしかない」と締めくくった。

 フードテックが国家戦略となった今、日本の食産業はまさに歴史的な分岐点に立っている。その未来を切り開けるかどうかは、産業の垣根を越えた共創を実現できるかにかかっている。

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