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設計プロセスで完璧に製品の品質を確認できない理由製品リコールを生む品質不良の原因と対策(5)(2/2 ページ)

設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第5回では、設計プロセスにおける審査や試験/測定の役割を整理した上で、それでも製品品質を完璧には確認できない理由を、品質基準書と品質システムの観点から解説する。

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実施する試験/測定項目が曖昧→品質レベルが一定にならない

 設計品質を確認する試験/測定の項目は数多くあるため、どの項目を実施するかは、企画書や仕様書で明確にして記載する必要がある。図2で示した通り、設計者は、企画書/仕様書に記載された製品仕様を満足する機能性を実現しながら、定めた設計品質に配慮して設計しなければならない。つまり、試験/測定項目も製品仕様の一部なのである。

ODMの場合

 昨今、Webで販売されている比較的安価な製品は、日本ブランドの企業が中国のODMメーカーに委託している場合が多い(連載第4回を参照)。

 ODMは設計製造委託であるため、実施する試験/測定も中国のODMメーカーに一任することになる。たとえ一任していても、日本ブランドの企業が設計品質の知識を十分に持っていて、実施された試験/測定が日本ブランドの企業の定める品質レベルを満たしていることが分かれば問題はない。

 ところが現実には、日本ブランドの企業が設計品質の知識や確認方法を知らないままODMメーカーに依存している場合がある。このような場合、日本ブランドの企業は、何の試験/測定を実施するか、また判定基準は何かを十分に把握できない。つまり、日本ブランドの企業が自社製品の品質レベルを知らないまま、自社の責任で市場に販売してしまう恐れがあるのだ。

 中国のODMメーカーへ委託すると、一般的な日本製品と比較して、実施される試験/測定項目が少なかったり、判定基準が低かったりする場合がある。つまり、安全性と信頼性の品質が一般的な日本製品と比較して不十分な製品が市場に出るリスクが高まるのだ。

 現在、Web上で世界中から中国のODMメーカーに委託できる仕組みが構築されている。昨今多く発生している品質不良は、このODMに起因するケースが多いと筆者は考える。原則として、製品メーカーである日本ブランドの企業が、自社製品の品質レベルを知らない状態であってはならない。

 適切な対応方法は、日本ブランドの企業が、中国のODMメーカーが実施した全ての試験/測定レポートを入手することである。レポートで試験/測定方法と判定基準を確認し、それが妥当であるかを判断するのだ。難しければ、専門家に相談するのがよい。

 その後、試験/測定方法と判定基準を整理して、日本ブランドの企業の品質基準書に記載して保管し、次の製品をODMするときに活用する。試験/測定レポートは、製品メーカーにとって重要な設計資産となる。

試験/測定方法の改ざん→定めた品質レベル以下の製品ができる

 試験/測定方法の改ざんなど、意図的に行われるものは、品質基準書や品質システムの改善、仕様書や試験/測定レポートの確認などでは是正できない。コンプライアンス違反であることを知って改ざんする場合、コンプライアンス教育だけで抑止することにも限界がある。

 改ざん防止策として、試験/測定を設計者の部署と完全に分離して品質保証部が行う方法や、「試験/測定→レポート作成→確認と承認」を社内ネットワークシステム上で行い、改ざんできないようにする方法がある。前者は組織変更や業務変更が求められ、後者はシステム構築が必要だ。全ての試験/測定に一度に対応するのは難しいが、できるものから対応していってもよいだろう。

 筆者の前職では、試験/測定方法の改ざんなどはあり得なかったと考えている。その理由は、設計者のモチベーションが「良い品質の製品を作りたい」にあったからだ。上司などからの「日程を間に合わせたい」や「コストを下げたい」という強いプレッシャーが、設計者のモチベーションを間違った方向に向けてしまい、これが改ざんにつながるのだ。

 筆者は、品質重視の業務用の製品を設計していたこともあって、設計者のモチベーションは「良い品質の製品を作りたい」という意識に向いていた。この連載で有効な対策を述べることはできないが、設計者のモチベーションが改ざんの原因になっているのは明らかだ。よって、改ざんを是正できるのは、経営者しかいない。 (次回へ続く)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書

製品化 5つの壁の越え方: 自社オリジナル製品を作るための教科書中国工場トラブル回避術 原因の9割は日本人

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