ボルト1本でどこまで耐えられる? 応力集中と許容繰り返し荷重を考える:冴えない機械の救いかた(7)(5/5 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第7回は、ボルト1本がどれだけの繰り返し荷重に耐えられるのかを考える。ねじ谷底の応力集中や疲労限度線図の基礎を整理しながら、ボルト1本構成の許容繰り返し荷重を求める。
3本でもつ設計をすれば問題解決
この章を読んだら、このシリーズを読むのをやめて設計に戻ってもいいと思います。
ねじ谷底で応力集中が発生しているボルトの疲労限度が分かったので、ボルト3本でもつように設計すれば、ボルトは疲労破断しないという考え方です。ただし、ギリギリの強度で機械を作ったら破断確率は50[%]なので、2倍以上のマージンは必要です。
この方法は、有限要素法ソフトの接触要素が普及していなかったころに筆者が採用していた方法で、ボルト10本構成の打ち抜き金型のボルト破断事例を解決した実績があります。
高校幾何を思い出しましょう。図14に2点を通る平面と3点を通る平面を示します。2点を通る平面は、その2点を通る軸を中心に回転できるので平面を定義できません。一方、3点を通る平面は回転できないので平面を定義できます。
以上の理由から、「ボルト3本でもつように設計すればボルトは疲労破断しない」と筆者は主張します。なんというロジックの飛躍でしょうか。でも、自由にCAE解析ソフトを使えない読者も多いと思うので書いておきました。
実際の設計現場ではボルトは偶数本で設計すると思うので、4本以上になるでしょう。見栄えの都合でボルトの数を10本にしてもいいと思いますが、疲労強度計算ではボルトは3本だとします。
つまり、荷重振幅を3で割り、それをボルトの有効断面積で割った応力(応力振幅)が、平均応力と切欠係数を考慮した疲労限度より十分小さければ「よし」とする考え方です。この手順を図15にしました。
図16、図17に設計例を示します。
図16左図のように、荷重の作用線と各ボルト軸までの距離はなるべく等しくする必要があります。荷重の作用線が偏っている場合を考えましょう。この場合、荷重の作用線に近い側のボルトへ荷重が集中するので、その側のボルトを4本にする必要があります。
荷重が集中する側を4本、反対側を2本とした結果、図16右図のように必要なボルト数は4本+2本となります。しかし、強度計算はボルト3本で実施します。
図17では、下側のボルト近傍はブラケットが壁を押し付けているので、このボルトは勘定に入れません。上側のボルトを4本にします。
以上、簡単な設計法を説明しました。
今回はこの辺にしましょう。ここから先は、より厳密にボルトの金属疲労を予測する方法を述べます。例えば、ボルトが定められたトルクで締結されているときの許容繰り返し荷重や、ブラケットなど被締結体の形状が複雑な場合のボルト疲労強度の考え方などです。
あと、「ボルトが16本だからといって許容荷重は16倍にならない」ことを力説します。 (次回へ続く)
参考文献:
- [1]石橋|金属の疲労と破壊の防止|養賢堂(1967)
- [2]日本機械学会|機械工学便覧 A4 材料力学(1992)
- [3]日本産業標準調査会|一般構造用圧延鋼材|JIS G 3101(2020)
- [4]西原、櫻井|繰返引張圧縮應力を受ける鋼の強さ|日本機械学會論文集(S14)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmemag/41/261/41_KJ00001472697/_pdf/-char/ja
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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