今夏も危険な暑さ――命を守る「難燃×冷感インナー」造船現場向けクラボウら開発:材料技術
今治造船やクラボウなど4社は、火気と酷暑のリスクから作業者を守る「難燃×冷感プリントインナーウェア」を共同開発した。独自の難燃ニットと持続冷感技術を融合し、安全性と快適性を両立。2026年夏の実証を経て、2027年の一般販売を目指す。
今治造船、クラボウ、リベルタ、ハイドサインの4社は2026年6月11日、造船現場における過酷な作業環境に向け、安全性と快適性を両立した「難燃×冷感プリントインナーウェア」を共同開発したと発表した。
(左から)リベルタ 代表取締役の佐藤透氏、今治造船 代表取締役社長の檜垣幸人氏、クラボウ 代表取締役 取締役社長の西垣伸二氏、ハイドサイン 代表取締役社長 兼チーフデザイナーの吉井秀雄氏[クリックで拡大]
溶融せず、熱を逃がす――「難燃」と「冷感」を両立した新素材
造船業界を含め、火気作業を伴う労働現場では、作業服(アウター)の難燃化が進んでいる。しかし、今治造船 代表取締役社長の檜垣幸人氏は「外側の作業服は改良が進んでいるが、内側に着用するインナーウェアは、安全性と快適性の両立が課題となっていた」と指摘した。
一般的に市場で流通している速乾性や清涼性に優れたポリエステル素材のインナーウェアは、火気を伴う環境では熱による溶融リスクがある。一方、綿素材は溶融しないものの、一度着火すると燃え広がる延焼リスクを抱えている。また、防護性に優れた従来の難燃素材を採用したインナーウェアは、熱や汗がこもりやすいという問題があった。
そこで今回の共同開発では、クラボウの難燃素材とリベルタの冷感プリント技術を組み合わせた。ベースとなる生地には、クラボウの難燃素材「BREVANO(ブレバノ)」を採用している。BREVANOは、着火しても表面が炭化して空気を遮断し、自己消火することで燃え広がりを抑える特性を持つ。これをインナーウェア用に、通気性と速乾性を両立した新たなニット素材として開発した。
さらに、この難燃ニット素材の肌面(裏側)に、リベルタの冷感プリント技術「FREEZETECH」を施した。生地の裏側にエリスリトールやキシリトールを含有した冷感プリントを加工することで、発汗時の水分を吸収し、その吸熱特性によって生地温度を持続的に低下させる。一般的な接触冷感とは異なり、汗をかくほど冷感を得られる仕組みとなっている。
これら今治造船の現場作業の知見、クラボウの難燃素材開発、リベルタの冷感プリント技術に加えて、ハイドサインが造船現場特有の作業姿勢や動作を考慮したパターン設計を組み合わせることで、難燃×冷感プリントインナーウェアの開発に成功した。
2026年夏より今治造船グループの約500人で着用実証
今治造船は、造船現場で働く作業者を火気/酷暑のリスクから守るという思いから、2025年4月に約30年ぶりとなる作業服の刷新を実施した。長年、綿100%が常識とされていた造船所の作業服を見直し、クラボウと連携して独自生地を開発。36着の試作品を経て、難燃生地をアウターに採用した。クラボウ 代表取締役 取締役社長の西垣伸二氏は「当社は単なる生地を製造して販売するメーカーではない。作業者の安全性と快適性の両立を目指し、働く人への投資を惜しまないという今治造船の思いに強く共感した」と、共同開発への思いを語った。
同製品は、2026年夏より今治造船グループの作業者約500人を対象に着用実証を実施する。実際の現場において、酷暑環境下での快適性や作業時の動きやすさなどを検証し、生産可能な数量や最終的な仕様を決定していく方針だ。
また、実証を通じて運用面の検討も進める。アウターとなる作業服は会社からの支給が一般的だが、インナーウェアは毎日着用する性質上、必要となる枚数が多くなる。そのため、全数を会社からの支給とするのか、個人購入とするのかなど、具体的な運用方法についても実証の中で探っていくという。
検証を経て、2027年からはリベルタを通じた一般販売も予定している。造船業界にとどまらず、鉄鋼、建設、インフラ保守など、火気を扱う作業と酷暑の二重リスクを抱える他業界への展開も見据えており、広く労働現場の安全性向上に貢献する方針だ。
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