住友化学が愛媛工場でアクリル樹脂をリサイクル、資源循環システムの構築へ:材料技術
住友化学は、愛媛県新居浜市で保有する愛媛工場にアクリル樹脂のケミカルリサイクル実証設備を新設し、使用済みアクリル樹脂の回収、再資源化、製品での使用を扱う一貫資源循環システムの構築を進めている。
住友化学は2022年12月23日、アクリル樹脂(PMMA、ポリメチルメタクリレート)のケミカルリサイクル実証設備を愛媛工場(愛媛県新居浜市)に新設したことを発表した。今回の実証設備により再生したアクリル樹脂のサンプル提供を2023年春から開始し、使用済みアクリル樹脂の回収、再資源化、製品での使用を扱う一貫資源循環システムの構築を本格化する。
ケミカルリサイクル実証設備では、アクリル樹脂を熱分解し、原料となるMMA(メチルメタクリレート)モノマーに高効率で再生する、住友化学と日本製鋼所が共同開発した技術を導入している他、日本製鋼所製の二軸混練押出機を採用しており、アクリル樹脂を高品質に再生する技術の実証と量産化の検討を行う。
上記の設備で再生したMMAモノマーは、化石資源を原料とした材料と同等の品質で、従来品と比べて製品ライフサイクル全体のGHG(温室効果ガス)排出量を60%以上削減できる見込みだ。
既に、再資源化の仕組みづくりにも着手しており、長年の協業先である日プラや大手家電メーカーなどから廃材や使用済みアクリル樹脂を回収するとともに、再資源化した樹脂の顧客開拓も進めている。今後は、異業種と連携してアクリル樹脂の回収から再生、製品化まで取り組むことで、アクリル樹脂の資源循環システムを構築する。
なお、循環型社会の実現に向けて、住友化学は、リサイクル技術を活用して得られる再生プラスチックなどを対象にしたブランド「Meguri(メグリ)」を2021年9月に立ち上げた。Meguriでは、製品ライフサイクル全体で生じるGHG排出量の削減割合などで基準を設けており、基準を満たした再生プラスチックを扱う。
新設したケミカルリサイクル実証設備で再生したMMAモノマーを用いたアクリル樹脂がMeguriブランドの第1号製品となる。今後は、リサイクル技術を活用して得られるアクリル樹脂は「Sumipex Meguri(スミペックス メグリ)」として販売する。
また、住友化学の100%子会社である住化アクリル販売が手掛けるマテリアルリサイクル技術を活用したアクリル樹脂のシートについても同じくMeguriブランドとなり、2023年1月に「SUMIKA ACRYL SHEET Meguri(スミカアクリルシートメグリ)」として発売する予定だ。
アクリル樹脂は、プラスチックの中でも高い透明性を有する他、耐候性や加工性にも優れ、自動車のテールランプや家電、水槽、液晶ディスプレイ、飛沫防止板などに広く使用されている。一方、化石資源を原料としたプラスチックについては、製造から使用後の処理までの過程で排出されるGHGを削減し、その再資源化を推進することが求められている。
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