オムロンとダッソーがIT/OT融合でタッグ 生産システムの仮想ツイン構築:ハノーバーメッセ 2026(2/2 ページ)
オムロンとダッソー・システムズが、情報技術(IT)と運用技術(OT)の融合で協業する。バーチャルツインと産業オートメーション技術におけるそれぞれの強みを組み合わせることで、「メーカーや装置メーカーは、よりスマートで柔軟性が高く、高性能な生産システムの設計、シミュレーション、検証、導入が可能になる」としている。
狙いや競合優位性、展開計画は?オムロン担当者に聞いた
今回、現地でOmron EuropeのEuropean R&D Managerを務めるTim Foreman(ティム・フォアマン)氏にこの協業に関して詳細を聞いた。
――なぜダッソー・システムズと協業するのか、その狙いは
フォアマン氏 ダッソー・システムズはCADソフトウェアを用いた仮想空間での製品設計で広く知られるなどIT分野で非常に強い。一方、オムロンは、OTの分野、すなわち生産設備や機械などにおいて高い評価を得ている。
そして今後は、製品だけでなく、生産ラインそのものも仮想空間で設計されるようになるトレンドが見えている。
そのため、オムロンは生産分野のスキルを、ダッソー・システムズは仮想空間分野の専門性を持ち寄り、協業することにした。共通の顧客に対し、製品設計、生産ラインの設計、さらには実際の製造立ち上げまでのトータルソリューションをどのように提供できるかを検討し、さらにそれをできるだけ簡単にして、市場投入までの時間短縮やより少ない人員でより多くの成果を上げられるようにすることを目指している。
これは市場において非常に重要なトレンドでもある。両社が連携することで、各社単独よりも優れたソリューションを提供できると考えている。
――どのように統合を進めているのか
フォアマン氏 オムロンは約30万点という非常に幅広い製品ポートフォリオを保有している。これらを段階的に仮想空間でも利用できるようにしている。これにより設計者は、仮想ロボットや仮想コントローラーをダッソーの環境に配置し、生産ラインを仮想空間上で実際に動かすことができる。ロボットとの同期を確認したり、安全機能が正しく働いているかをチェックしたりできる。つまり、新しい生産ラインの設計を、製品と組み合わせた形で事前に検証できるのだ。
場合によっては、製品を少し変更するだけで生産が容易になることもある。このような連携は、全てのデータが単一の場所に集約されているダッソー・システムズの高度なプラットフォーム上で実現されている点が特徴だ。例えば、オムロンのPLCプログラムを変更すれば、その変更はソフトウェア全体の他の部分にも即座に反映される。このように、3DEXPERIENCEプラットフォームをはじめとするダッソーの優れたソフトウェアとオムロンの製品ポートフォリオを組み合わせ、段階的に統合を進めている。
――競合他社と比較した場合の強みは何か
フォアマン氏 われわれは顧客にとって最適なソリューションを提供したいと考えている。まず、オムロンはセンサーからロボットまでを網羅する非常に幅広い製品ポートフォリオを持っている。これほど広範なポートフォリオを持つ競合他社は存在せず、そのためトータルソリューションを提供できる。
一方、ダッソー・システムズは、CADシミュレーションから製造実行システム(MES)まで、製造業向けのエンタープライズシステム全体をカバーする、非常に高度に統合されたソフトウェアプラットフォームを有している。プロジェクト計画からその間のあらゆる業務まで対応していて、全てのデータは単一のストレージに集約される。この結果、同一プロジェクトに関わる全ての関係者の間で、リアルタイムに情報共有が行われる。これは双方に共通する特徴であり、両社を組み合わせることで、さらに独自性が高まる。
――IT/OT融合では、コグニサントとも提携している。今回の提携との関係は
フォアマン氏 オムロンは製品サプライヤーであり、製造ソリューションの提供企業だ。ダッソー・システムズも同様に製品ポートフォリオを持っている。両社はそれぞれのポートフォリオを統合し、顧客を支援するための大きなソリューションを構築している。
一方、コグニサントはシステムインテグレーターであり、ソリューションプロバイダーだ。同社は顧客ごとにITソリューションの導入を支援する役割を担っている。
オムロンとダッソー・システムズが特定の顧客にソリューションを提供し、その顧客が望む場合にはコグニサントが実装を担当することも可能だろう。つまりわれわれは、お互いの強みを補完し合う関係になる。
――協業ソリューションの展開の予定は
既に展開を進めている。また、オムロンの自社工場でも活用している。PLCや産業用PCを製造する欧州のオムロン工場で、既存ラインに対して仮想モデルを構築した。これにより、実際のラインと仮想ラインの両方を比較可能になった。工場向けにKPIダッシュボードを構築し、実ラインと仮想ラインのパフォーマンスを同時に可視化し、差異が生じた場合には原因を特定し、例えばロボットの速度低下などの問題を把握して改善につなげる。これによって、生産性向上やボトルネックの特定、コスト削減を実現している。
このような取り組みは徐々に認知が広がっていて、大手顧客を招いて実際に見てもらっている。直近では日本の大手自動車メーカーなどが視察に訪れ、関心を示していた。現在は両社のポートフォリオ統合を段階的に進めている段階であり、まずは成功事例の構築に注力している。顧客展開は段階的に拡大する予定だ。
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