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黒船「フィジカルAI」襲来 日本におけるヒューマノイド開発の最適解とはロボット開発クローズアップ(1/4 ページ)

アールティが、産業技術総合研究所、川田テクノロジーズ、川崎重工業などと共同で「フィジカルAI勉強会」を開催。ヒューマノイドの実用化に必要不可欠な技術としてフィジカルAIという言葉そのものや技術成熟度への認識については混乱が見られる中、今回の勉強会は現時点でのフィジカルAIの捉え方を共有することを目的に開催された。

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 アールティは2026年3月4日、産業技術総合研究所(産総研)、川田テクノロジーズ、川崎重工業(川崎重工)などと共同で「フィジカルAI勉強会」を開催した。ヒューマノイド(汎用人型ロボット)の実用化に必要不可欠な技術としてフィジカルAI(人工知能)への注目が集まる一方で、フィジカルAIという言葉そのものや技術成熟度への認識については混乱が見られる。そこで今回の勉強会は、現時点でのフィジカルAIの捉え方を共有することを目的に開催された。会場は、川崎重工が羽田イノベーションシティ(東京都大田区)内に開設しているソーシャルイノベーション共創拠点の「Co-Creation Park KAWARUBA」を使用した。

 なお、フィジカルAIという言葉が広く使われるようになったきっかけはNVIDIAである。NVIDIAにおけるフィジカルAIの定義は「NVIDIA Glossary」に掲載されている。

ヒューマノイド導入には発想の転換やKPI変更が必要――アールティ

アールティの中川友紀子氏
アールティの中川友紀子氏

 最初にアールティ 代表取締役の中川友紀子氏がヒューマノイドの現状についてプレゼンを行った。2005年創業の同社は現在、製造業における軽作業の自動化ソリューションを「ラストワンハンド」と名付けて、人型協働ロボット「Foodly」などの開発を行っている。

 ヒューマノイド市場は、年平均成長率39%、2050年に7兆米ドルを超えるという予測もあり、自動車産業に匹敵する新たな次世代産業へと成長する可能性があると注目されている。中川氏は「技術開発段階評価に用いられるTRL(Technology Readiness Level、技術成熟度。レベル1〜9の数字で示される)で見ると、現在のヒューマノイドはエンターテインメント用途で見るとTRL7くらいだが、製造業や家庭用ではTRL4〜6程度ではないか」と現状の技術レベルを整理した。

アールティの人型協働ロボット「Foodly」
アールティの人型協働ロボット「Foodly」[クリックで拡大]
製造業/家庭用でのヒューマノイドのTRLは4〜6程度でまだ研究開発段階
製造業/家庭用でのヒューマノイドのTRLは4〜6程度でまだ研究開発段階[クリックで拡大]

 米中のロボット企業はAIを学習させるのに必要な膨大な実データをトレーニングセンターで収集して、基盤モデルを構築しようとしている。ロボティクスで培われてきた形式知、暗黙知、身体知(エンボディドAI)が組み合わされ、ロボットに実装されようとしている。

中国AgiBot(エージーアイボット)のヒューマノイド紹介映像[クリックで再生] 出所:AgiBot

 なお、アールティでは、フィジカルAIが現実のモノを動かすAIであるのに対し、エンボディドAIは五感や身体を持ったAIであり、基本はロボットだが身体性があればバーチャルな存在も含まれると整理しているという。そして、AIとハードウェア、ROS、現場実装を含めて開発していきたいと述べた。

 テスラ(Tesla)、FigureAI、Agility Robotics、UBtechなど米中のヒューマノイドの主な応用分野は自動車製造である。ニーズがあるだけではなく、そのような分野で活用する方がデータ自体が集まりやすいという側面もある。一方、日本でも以前からセミヒューマノイドを使った実用化は進められている。

 中川氏は、BMWとシーメンスがFigureAIのヒューマノイドを導入する際に、ブリッジソフトウェアの「Blue Box」を使ってROS 2と産業用PLCなど既存の工場設備をつないだ取り組みを紹介し、多様なコンポーネントを柔軟に統合可能なROSの重要性を強調した。日本はエンジニアを採用するための競争力も落ちているが、日本独自の開発言語ではないROSを使うことで人を雇いやすいという側面もあるという。

 センサーリッチなロボットを使うフィジカルAI時代には、従来のセキュリティに加え、製造技術や営業秘密の流出リスクも考える必要がある。経済安全保障の観点からも国産技術の開発が必要とされている。

工場での安全とリスクも重要
工場での安全とリスクも重要[クリックで拡大] 出所:アールティ

 日本でヒューマノイド関連の取り組みが遅れている理由としては「日本では部分最適化や工程見直しへの適用は進んでいるものの、海外は大企業がスタートアップが提供するヒューマノイドのユーザーとなって積極的に試験導入する『ベンチャークライアント方式』で一気に文化形成/先行投資を狙っている。発想の転換が必要だ」(中川氏)。

ヒューマノイド導入にあたっては技術的進歩の時間軸を考慮する必要
ヒューマノイド導入にあたっては技術的進歩の時間軸を考慮する必要[クリックで拡大] 出所:アールティ

 フィジカルAIに関しては、AIや情報革命による失業などを懸念する反対運動「ネオ・ラッダイト運動」のようなアクションも既に起き始めている。「現場導入のためには現場のKPI(重要業績評価指標)を変えること」(中川氏)が重要だという。具体的には、日本では数年後がKPIの目標時期になっているのに対し、欧州、米国、中国のKPIは10年後に向けて、使用継続率やAIの改善寄与率の向上を目指している点が異なるという。

欧米と日本ではKPIが異なるという
欧米と日本ではKPIが異なるという[クリックで拡大] 出所:アールティ

 この他、仮想環境で学習させたAIモデルを実世界に適用する「Sim2REAL」を活用することで実現した、4脚ロボットの短期開発の事例も紹介された。

アールティの4脚歩行ロボット「Mujina(ムジナ)」
アールティの4脚歩行ロボット「Mujina(ムジナ)」[クリックで拡大]

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