黒船「フィジカルAI」襲来 日本におけるヒューマノイド開発の最適解とは:ロボット開発クローズアップ(3/4 ページ)
アールティが、産業技術総合研究所、川田テクノロジーズ、川崎重工業などと共同で「フィジカルAI勉強会」を開催。ヒューマノイドの実用化に必要不可欠な技術としてフィジカルAIという言葉そのものや技術成熟度への認識については混乱が見られる中、今回の勉強会は現時点でのフィジカルAIの捉え方を共有することを目的に開催された。
川田テクノロジーズによる働くヒューマノイドへの取り組み
橋梁、鉄鋼、建築事業などを手掛ける川田工業の持株会社である川田テクノロジーズはヒューマノイドも開発している。川田テクノロジーズ 基盤技術研究室 主幹の長嶋功一氏は、同社の歴史から紹介した。同社のヒューマノイド開発は1987年のパーソナルヘリコプター開発に源流がある。その後、航空事業からは撤退したものの、そこで培われた軽量化/メカトロニクスの技術を生かすために、東大のヒューマノイド研究室JSKのロボット開発の受託や、経済産業省傘下のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトに携わることになり、今日に至っている。
「2009国際ロボット展」でお披露目されたヒト型双腕協働ロボットの「NEXTAGE」は、ヒューマノイド技術の実用化ラインを探る中から誕生した。工場内では歩行させる必要はないと考えて下半身は固定とし、最初は産総研のHRP-2の上半身をベースに開発を始めたが、肘を張り出さない構造などを目指してNEXTAGEを実用化した。
NEXTAGEは、従来のロボットと違って人間と協働する工程への導入を目指しており、作業性、安全性、コンパクトさなどを実現している。現在は2代目に当たる「NXA」と、よりスリムな「Fillie」の2機種が販売されている。NEXTAGEの手先精度は30μmであり、人が使う道具や設備をそのまま扱うだけではなく、バネやベルトをはめるといった、かなり細かい作業もできる。日本政府が2014年から「ロボット新戦略」を立ち上げたことも後押しとなり、グローリー、花王、パナソニックなどの工場でも活用されている。
川田テクノロジーズはAI活用について、エクサウィザーズと共同で粉体秤量技術の開発に取り組んだ。また、オリィ研究所の「分身ロボットカフェ」にも協力し、遠隔操作されるバリスタロボットとしてNEXTAGEが活用されている。この他、エーザイでの細胞培養実験ロボット、理化学研究所の大型放射光施設「SPring-8」でも使われている。
このように、従来の産業用ロボットをベースとすることでNEXTAGEは数多くの実績を積んできたが、そこに「黒船」としてやってきたのが米中のヒューマノイドである。駆動系としてはQDD(準ダイレクトドライブ)モーター、制御系ではSim2Realなどの到来である。外乱に対応できるQDDを使うことでロボットは転倒しても壊れにくくなり、GPUを活用した大規模シミュレーションによる仮想空間での試行錯誤が可能になった。実機の設置位置を移動するなどしても、大きな補正を行うことなくそのまま意図した動作をさせやすくなった。結果として、未知の荒れた場所でも歩行可能なロボットが誕生している。
一方、産業用として見ると、QDDは低減速比であるためパワー不足であり、AIは品質保証が困難であるといった致命的な課題がある。
では「いいとこどり」は可能なのか。正確/精密な動きを維持しつつ、やわらかく制御することはできないのか。長嶋氏は「われわれはフィジカルAIのトップランナーではない」と述べつつ、グループ企業では建設現場をフィールドとして持っているので、そこをベンチマークとして、できることを積み上げていこうとしていると語った。学術的にどうこうよりは実際に役立つところを探っていこうとしているという。
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