検索
インタビュー

日本は本当に遅れているのか? AI×現場力で始まる日本型モノづくりの逆襲製造業×DX キーマンインタビュー(1/2 ページ)

日本の製造業のDXにおける現在地は国際的に見てどういう状況なのだろうか。製造業のDXに幅広く携わり、2025年12月に著書「製造業DX Next Stage: 各国/地域の動向やAIエージェントがもたらす新たな変革」を出版したアルファコンパス 代表CEOの福本勲氏に話を聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 AI(人工知能)などを含め、モノづくりのさまざまな工程でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいるが、日本の製造業の現在地は、国際的に見た場合、どうなっているのだろうか。

 インダストリー4.0の動向など製造業のDXに幅広い知見を持ち、新たに2025年12月に著書「製造業DX Next Stage: 各国/地域の動向やAIエージェントがもたらす新たな変革」を出版したアルファコンパス 代表CEOの福本勲氏に、欧州の動向と日本の製造業の進むべき道について話を聞いた。

AIの進化と国際情勢の変化がモノづくりにも影響

MONOist 福本氏には前回の著書を出版されたときにインタビューさせていただきました。新著「製造業DX Next Stage: 各国/地域の動向やAIエージェントがもたらす新たな変革」はそこから2年が経過した中で出されたものですが、この2年間の変化をどのように捉えていますか。

福本氏 この2年間で幾つかの大きな動きがあったと捉えています。最も大きな変化はAIの進化です。2年前は生成AIの活用が広がり始め、多くの一般業務の簡略化が進んだタイミングでしたが、現在はモノづくりのさまざまな工程なども含め、専門業務でも使える部分が増えてきています。製造業に限らず、さまざまな産業分野で業務の在り方を変えるような大きな影響が生まれつつあるタイミングだと考えています。

photo
アルファコンパス 代表CEOの福本勲氏。インダストリー4.0の動向など製造業のDXに幅広い知見を持ち、2025年12月に著書「製造業DX Next Stage: 各国/地域の動向やAIエージェントがもたらす新たな変革」を出版した

 もう一つは、国際情勢や地政学的な変化がより大きな影響をもたらしているということです。ウクライナ危機がまだ続いている他、米国の関税問題、米中関係の悪化など、これらの地政学的な問題における影響をより強く、大きなインパクトで受けるようになってきています。

 そうした中で、中国ではDXにおいても、日米などと切り離した形で独自の仕組み作りが進んでいます。例えば、中国ではスマート製造のリファレンスアーキテクチャとして「中国 スマートマニュファクチャリング・システムアーキテクチャ」を発表していますが、これはドイツのインダストリー4.0における「RAMI4.0(リファレンスアーキテクチャモデル インダストリー4.0)」を参考にしたと考えられます。ただ、異なっている部分もあり、独自の進化を遂げているといえるでしょう。

AIで変わるモノづくり、「Agent to Agent」の世界へ

MONOist AIの進化は目覚ましいですが、特に製造業において、どのような影響をもたらすと考えていますか。

福本氏 これからは人がAIエージェントに目標やコンテキストを与え、エージェントがそれを理解して自律的に業務を進める「ヒューマン トゥ エージェント(Human to Agent)」の世界が当たり前のものになってくると考えています。

 さらに、それらが定着した後には、「エージェント トゥ エージェント(Agent to Agent)」の世界が生まれます。AIエージェントとAIエージェントが話し合いながら、作業や交渉などを進めていく姿です。これまではAIを「コパイロット(副操縦士)」や「アシスタント」と呼んでいましたが、これからは「同僚」や「仲間」など、より人と同等に近いレベルになってくると見ています。

 既にそうした動きは現実化に向けて動き始めています。例えば、ドイツのシーメンス(Siemens)は「インダストリアル・エージェント」がプロジェクトマネジメントを行うビジョンを示しています。上位のAIエージェントに対して人間が「こんなロボットを作ってくれ」と指示を出すと、その上位エージェントが、AGV(無人搬送車)を操作するAIエージェントや、工作機械を操作するAIエージェントに対して順次指示を出し、それらが連携してモノを作っていく仕組みです。人間がいちいち細かい指示を出さなくても、AI同士がやりとりをしてタスクをこなしていく世界が実現されていくでしょう。

photo
ハノーバーメッセ2025でのシーメンスの発表の様子。産業向けAIで大きなインパクトを与える分野として、ビジネスプロセス、製品開発とシミュレーション、そして製造現場の3つを挙げていた 出所:ドイツメッセ

MONOist Agent to Agentを製造業の業務で現実的に活用する場合、どういう業務から進めていけばよいでしょうか。

福本氏 業務を作業ごとに細かく切り分けていき、さらにその中の一部を自動化するというようなところからAIエージェントの活用は進むでしょう。大きな範囲で人の作業を代替するのはまだ難しいことから、限られたところから置き換えていくイメージです。

 例えば、すぐに実現できそうなのは、請求書と入金データの突合(消込)作業などです。「入金データを読み解くAIエージェント」と「請求データを管理するAIエージェント」が互いにやりとりをして「この入金はこの3件分です」といった整理をしてくれるようにします。これらのように「量が多いので人間がやると時間がかかったりケアレスミスがおきたりすることがあるけれど、AIがやると間違えにくい」という業務から進むと見ています。特にバックオフィス業務はそういう作業も多いと思いますので、AIエージェント同士の連携が普及すると考えます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る