第4次産業革命で各団体が立てる「参照モデル」とは何?:いまさら聞けない第4次産業革命(11)(1/4 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第11回となる今回は、各団体が打ち出す「参照モデル(リファレンスアーキテクチャ)」について説明します。
本連載の趣旨
「第4次産業革命」や「インダストリー4.0」などの言葉を聞かない日はないほど、大きな注目を集めています。4番目の産業革命とされている通り、製造業の業態についても大きな影響を与える「第4次産業革命」ですが、その認識レベルや捉え方は置かれている立場や状況で大きく異なります。また「第4次産業革命とは結局何?」という人から「抽象論は分かったから具体的な技術の話が聞きたい」など求める情報レベルも大きく幅があるように感じています。
そこで本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。
※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoTによる製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。
本連載の登場人物
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
米国 好男(よねぐに よしお)
米国の第4次産業革命関係の事情に詳しい調査会社の社員。印出さんと交流がある。アメリカ好きがとことんまで極まっているが、東京・浅草生まれの生粋の日本人である。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回のあらすじ
第10回:「第4次産業革命を支えるIoTプラットフォームって結局何なの?」
あらすじ背景
従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。
さて前回は、2016年に数多く登場した「IoTプラットフォーム」の意味となぜこれほど多く登場しているのかについて紹介しました。簡単に振り返ってみましょう。
矢面氏の所属するグーチョキパーツもついにIoTの活用を視野にいろいろなベンダーと話をするようになったということでしたね。ただし、さまざまなベンダーが「IoTプラットフォーム」を提案してくることで困ったことがおきました。
みんな「このプラットフォームを使えばすぐにIoT活用できます」というんですけど、よくよく聞くと指している対象範囲が違うんです。結局「IoTプラットフォーム」って何なんですかね。
それに対して印出さんは、プラットフォームは「土台」や「足場」「基盤」を表す言葉で、IoTプラットフォームは「IoTを活用する土台」であることを説明します。ただ、IoTの真価は「現場でいままでデータ化できなかった領域をデータ化し、活用できる点」であるため、個別の現場やビジネスモデルにより活用の形が変化し、同時にその「基盤」の在り方も変わってきます。
だから、さまざまな「IoTプラットフォーム」が登場しているというわけ。
「IoTプラットフォーム」だからといってうのみにせずに、彼らがいう「IoTプラットフォーム」が何なのかを見極めないといけないということですね。
現状ではIoTプラットフォームは「クラウド中心」「エッジ中心」「通信中心」の主に3つに大まかに分けられますが、その中で「どういうことをやりたいか」というところからプラットフォームを選んでいくという方向性で、矢面さんも納得していましたね。
さて今回は、第4次産業革命に関連して、全体像を描こうとしている「リファレンスアーキテクチャモデル(参照モデル)」の動向について説明していきたいと思います。
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