100μ秒以下の高頻度通信が可能な核融合炉の制御技術を確立:組み込み開発ニュース
量子科学技術研究開発機構とNTTは、核融合炉内のプラズマを安定保持するために不可欠な、1万分の1秒以下という高頻度でのリアルタイム通信技術を開発した。将来の核融合炉の安定運転に大きく貢献する。
量子科学技術研究開発機構(QST)とNTTは2026年3月25日、核融合炉内のプラズマを安定保持するために不可欠な、100μ秒(1万分の1秒)以下という高頻度でのリアルタイム通信技術を開発したと発表した。また、同技術を世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」の制御システムに実装し、その性能を実証することに世界で初めて成功した。
核融合炉で高圧力プラズマを維持するには、急速に大きくなる不安定性を100μ秒以下の極めて短い時間スケールで制御する必要がある。しかし、プラント規模が拡大した将来の原型炉では通信距離が数百mに及び、転送データ量も1KB程度に増加すると見込まれるため、従来の通信技術ではこの要求精度を満たせない。
共同研究では、周期的な通信特性に着目し、通信制御情報の交換を最適化した。受信装置からの確認応答に次周期の制御情報を付与して、データ送信直前の情報交換を不要とすることにより、超高頻度確定性通信技術を確立できた。さらに、TSN(Time Sensitive Networking)技術を活用して送信タイミングを厳密に管理し、ネットワーク内でのデータ転送待ちによる遅延ゆらぎを回避した。
(a)JT-60SAにおける超高頻度通信ネットワークの設計。(b)同技術による通信データ容量に対する転送時間の変化。核融合炉で想定される1KB容量で100μ秒以下の高頻度データ通信に成功[クリックで拡大] 出所:量子科学技術研究開発機構
開発した超高頻度確定性通信技術を、JT-60SAの制御ネットワーク内の400m離れた計算機に組み込み、データ転送時間を評価したところ、100μ秒以下の周期性を維持しながら、確定性のあるデータ転送が可能であることを確認できた。
同技術は、JT-60SAの加熱実験において高圧力プラズマを長時間安定してリアルタイム制御する上で欠かせないものだ。また、日本ら7カ国で進めるITER計画や次世代装置の原型炉など、より大きなプラズマを予測する多数の制御計算機を必要とする核融合炉のリアルタイム予測制御につながる画期的な成果といえる。
両者は今後、さらに連携を強化し、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)などの先進技術を核融合分野へ適用しつつ、フュージョンエネルギーの早期実用化を目指す。
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