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TSNがなぜ産業用ネットワークで注目されているのかいまさら聞けないTSN(前編)(1/3 ページ)

産業用ネットワークで今大きな注目を集めているのが「TSN」という規格です。なぜTSNがここまで注目されているのでしょうか。本稿では前後編に分けて「なぜこれほど注目を集めだしたのか」「どのように使われることが期待をされているのか」について紹介していきます。

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 産業用ネットワークで「TSN」への注目が高まっています。本稿では産業分野におけるTSNが「なぜこれほど注目を集めだしたのか」「どのように使われることが期待をされているのか」について、前後編で紹介していきます。前編では、TSNとは何かという点となぜ産業用途で注目されるようになったのかについて説明します。

TSNとは何か、産業ネットワークの変遷から考える

 「TSN(Time-Sensitive Networking)」とはその名の通り、時刻を厳密に取り扱う一連のネットワーク規格の総称です。本記事執筆時点でも、IEEE 802.1において規格の策定検討が現在進行形で進んでいます。IEEE内で2012年にタスクグループが発足し、先行して映像音声通信分野での適用が進みました。ただ、このTSNにおける「時刻を厳密に取り扱うことができる」という特徴が、産業分野においてもOT(制御技術)とIT(情報技術)の融合や、IIoT(産業用IoT)化に伴う課題の解決技術として期待されることから、産業用途での活用が急速に広がろうとしているのです。

 TSNが注目を集める理由は、産業オートメーションにおける通信の変遷を振り返ると、分かりやすいでしょう。2000年以前、産業ネットワークのオープン化は1980年代に規格策定が開始され、1990年代より活用が本格化してきました。複数のオープンネットワーク規格が生まれ、シリアル通信を主としたオープンネットワークは「フィールドバス」と呼ばれています。

 このフィールドバスでは「ケーブルの種類が違う」「通信周期(ボーレート)が違う」といったメーカーや規格ごとで個別化が進んでおり、これらをシンプル化するためにネットワークインフラの共通化などを進めようとしても、物理的に不可能な状況でした。通信帯域も狭く、ケーブル長の制限も厳しいなど、シリアル通信の制限のための課題も存在しました。

 これらの課題を解決するため、2000年代にはイーサネット規格を活用し「産業用イーサネット」と呼ばれる形で、さまざまな規格が生まれ実用化されていきました。汎用的なネットワーク規格であるイーサネット規格を利用するため、ケーブルやネットワーク機器の共通化が図られ、より柔軟なシステム構成で実装することができるようになりました。また、通信速度も飛躍的に向上、多くのデータ通信が可能になってきています。これらのメリットは受け入れられ、産業用イーサネットはシリアルベースのフィールドバスから置き換えが進んできたといえるでしょう。

 しかし、この産業用イーサネットにも課題が残されていました。規格の土台は共通化が進んだものの、他社製品などの接続は前提とされていないことが多く、相互接続が行えないというものです。イーサネットというケーブルが共通化できても複数のプロトコルを混在させることは難しかったのです。

 これには「産業オートメーションにおける通信要求を満たす」ということが最優先されるという産業用イーサネットの特徴があります。汎用的なTCP(UDP)/IP通信を利用したとしても、同一ネットワークで複数の通信が混在した場合でも、求められる制御に関する性能を担保することを考えれば、結局は個別のシステム構築をする必要があるからです。

 一方、急速に発展するITやデジタル技術を製造現場で活用する動きは急速に高まっています。例えば、映像データなどをはじめ、汎用的なTCP(UDP)/IP通信でデータ収集を行い、AI(人工知能)などで解析されたデータを元に制御通信でロボットを動かすなど、今後はこれらのITを前提とした工場システムとしての発展が見込まれます。

 産業オートメーションが発展し、従来以上にITとOTの統合が進んでいけば、従来のようにメーカーや規格によって個別でシステムが必要な環境は不合理です。さまざまな機器や情報が「つながる」ことが求められる中、これらを既存のリソースを生かしたまま連携させる新たな技術が必要とされてきました。こうした産業オートメーションの発展、変遷の結果、TSNに注目が集まっているといえるでしょう。

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産業ネットワークの変遷のイメージ[クリックで拡大] 出所:MOXA

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