工場用のイーサネットって何だろう?:工場用イーサネット入門(2)(1/4 ページ)
インダストリー4.0や工場向けIoTなどに注目が集まっていますが、そもそも工場内のネットワーク環境は、どのように構築すべきなのでしょうか。本連載では、産業用イーサネットの導入に当たり、その基礎から設備設計の留意点などを含めて解説していきます。第2回ではイーサネットとは何かを紹介します。
第1回:「なぜ工場でネットワークを考えないといけないのか」
現在、皆さんはネットワークを利用してこの記事を読まれています。毎日、当たり前のようにWebサイトを閲覧したりメールをやりとりしたりしているネットワーク通信のほとんどは「イーサネット(Ethernet)」という通信規格でデータをやりとりしています。
今回は、そのような一般的に使われている「Ethernet」と、産業用で使われている「産業用Ethernet」の違いについて紹介します。
工場内のネットワーク
一般的なEthernetと産業用Ethernetの違いに入る前に、まず、工場の中のネットワークについて整理します。現在の工場内ネットワークは、大きく次の3階層、情報系ネットワーク、コントローラー間ネットワーク、フィールドネットワークに分かれます。
情報系ネットワークは、パソコンやサーバなどが接続されている工場ネットワークでは、最上位のネットワーク層です。この階層では、生産計画や製造実績の収集、工程の管理などがアプリケーションとして運用され、標準のEthernetが1990年代後半から使用されています。この階層は、制御を目的としたネットワークではないため、高い応答性能は求められません。
コントローラー間ネットワークは、PLC(Programmable Logic Controller)やロボット、産業用パソコン、NC(Numeric Control)装置、DCS(Distributed Control System)などが接続されるネットワークです。2000年代初めまでは、PLCベンダー独自仕様のネットワークが主流でしたが、マルチベンダー環境への要望や、高速・大容量のデータ転送が必要なアプリケーションが増加したため、産業用Ethernetの採用が加速しています。この階層では、機器の作業連携や動作の同期といった制御のために、一定期間内にデータ交換を確実に完了する必要があり、数ミリ秒から数十ミリ秒での応答性能が求められます。
フィールドネットワークは、コントローラーがマスター機器となり、センサー・サーボモータ・リモートIO・インバータといった各種測定機器などがスレーブ機器として接続されるネットワークです。この階層は、現在はPROFIBUSやDeviceNetに代表されるオープン規格のフィールドバスで占められていますが、これらの推進団体が策定した産業用Ethernetの普及に伴い、今後は徐々に置き換わっていくものと思われます。マスター機器とスレーブ機器間に求められる応答性能は、数ミリ秒から数十ミリ秒です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.