リーダーシップの壁【前編】 日本人が考える「良きリーダー」が陥るワナ:海外駐在員になったら知ってほしい「3つの壁」(1)(2/2 ページ)
多くの製造業が海外での成長を目指す中、海外駐在員の役割は重要になっていますが、思った力を発揮できない場合も多く見られます。本連載では、HR視点でどのような考え方が必要で、どのような協力体制を築くべきかをお伝えします。第1回となる今回は「リーダーシップの壁」について解説します。
1. 「沈黙」の意味が違う:ゴルフ型 vs ラグビー型
最もズレが生じやすいのが、会議中のコミュニケーションです。日本企業の会議は、いわば「ゴルフ型」です。順番にショット(発言)を打ち、他人が打っているときは静かに見守るのがマナーとされています。その際、沈黙は「思慮深さ」であり、発言せずとも「会議に参加している」と見なされます。このように、会議中は空気を読む力が求められます。
一方、対照的なタイプとして「ラグビー型」の会議があります。ボール(発言権)を奪い合い、議論に割って入り(タックル)、アグレッシブに前に進むことが「参加」と見なされます。この環境では、発言することが貢献であり、「発言しない=貢献していない」と受け取られてしまいます。
もし、日本人のリーダーが「まずは皆の意見を聞こう」とゴルフ型の姿勢で沈黙していると、現地スタッフは「なぜボスは何も言わないのか」「われわれのプロジェクトに関心がないのか」と不安や不信感が募ってしまいます。リーダーシップを発揮するためには、時には意識的に「ラグビー」のジャージーを身にまとう必要があります。母国語ではない言語であっても、冒頭から自分のポジション(意見)を明確にすることが求められます。
2. 「あうんの呼吸」は通じない:高コンテクスト vs 低コンテクスト
次に注意すべきは、日常のコミュニケーションにおけるズレです。「一を聞いて十を知る」という言葉があるように、日本は世界でも有数の「高コンテクスト型(文脈への依存度が高い)」の文化です。言葉にされない部分を、行間や空気を読むことで補完し合うことが良しとされます。
一方、対照的なタイプとして「低コンテクスト(言葉そのものが全て)型」の文化も存在します。この文化においては「一と言えば一」「言わなかったことは存在しないのと同義」と捉えられます。
ここで起きるのが、「方針は示したはず」という日本人リーダーと、「具体的な指示がない」と感じる現地スタッフとのすれ違いです。日本人が好む「起承転結」の話し方は、結論が最後になるため、低コンテクスト型を良しとしている人々からは「結局何が言いたいのか分からない」と受け取られてしまいます。欧米などの低コンテクスト型の環境では、結論から先に述べる「結・承・結」のコミュニケーションや、部下に対する期待を具体的に言語化して伝えることが、リーダーの信頼性に直結します。
3. 「助け合い」が「干渉」になる:アメーバ vs テトリス
上記のようなコミュニケーション以外で日本人が最も混乱することが多いのは、責任範囲の捉え方です。日本の組織は「アメーバ型」と表現されることが多く、職務記述書が存在しない、もしくは曖昧なケースも少なくありません。仕事が間に落ちないよう、お互いが柔軟にカバーし合う(三遊間のゴロを拾う)ことが「チームワーク」とされます。また、そのチームワークを発揮するために、リーダーはメンバーに対して自主性や積極性を求めるのが特徴です。
一方、日本国外の拠点では「テトリス型」の組織設計が一般的です。職務範囲がブロックのように明確に定義され、個人の責任範囲がはっきりしています。間に仕事が落ちないように、ブロックを隙間なく配置する責任はマネジャーにあります。
この前提を理解しないまま、善意で部下の仕事を手伝ったり、職務範囲外の業務を依頼したり、過度に自主性や積極性を求めたりすると、テトリス型に慣れているスタッフは「能力を信用していない」「私の仕事ではない」「役割設計はマネジャーの責任だ」と否定的に受け止められてしまいます。
こうしたすれ違いを乗り越え、現地スタッフから信頼されるリーダーになるには、何が必要なのでしょうか。次回は、海外拠点におけるマネジメントの具体的なポイントを解説します。
筆者プロフィール
齋藤 友佑(さいとう ゆうすけ)氏
株式会社リンクアンドモチベーション
組織人事コンサルタント
横浜国立大学経営学部卒業後、新卒で株式会社リンクアンドモチベーション入社。組織人事コンサルタントとして、企業の人材開発や組織開発支援に従事。2018年、インタラック関東南 代表取締役に就任。公立学校にネイティブ英語教師を派遣する教育事業に従事し、1000人の外国籍人材をマネジメント。リンクジャパンキャリア代表取締役を務めたのちに、「外国籍人材と日本企業の良い関係性作り」を目指して、英語圏を中心とした人材紹介サービスを提供。
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