中国で一目置かれる日本人になるためには:リモート時代の中国モノづくり、品質不良をどう回避する?(10)(1/4 ページ)
中国ビジネスにおける筆者の実体験を交えながら、中国企業や中国人とやりとりする際に知っておきたいトラブル回避策を紹介する連載。最終回となる第10回は「中国で一目置かれる日本人になるためには」と題し、重要な5つのポイントを解説する。
筆者は、中国駐在中によく感じていたことがあった。それは中国人にとって、日本製品、そして日本のブランドは憧れであるが、それを作っている日本人は憧れの対象にはならないということだ。
モノづくりにおいて、特にその信頼性(製品が壊れにくいこと)と製造性(長期的に一定の品質で製品/部品を作れること)に関する仕事は、日本人が明らかに秀でている。だが、中国における日本人の立ち振る舞いに、首をかしげる中国人は少なくない。原因はどこにあり、日本人は何を改善しなければならないのだろうか。以降、次の5つのポイントに分けてお伝えする。
(1)上から目線の日本人
(2)中国人はお手伝い
(3)コミュニケーション不足
(4)群れる日本人
(5)足りない英語力
(1)上から目線の日本人
中国人を“上から目線”で見る日本人が多い。以前であれば、ある程度は仕方なかった。それは、中国政府がモノづくりで国力を上げるために日本の製造業の中国誘致を推奨しており、中国人も日系企業で働きたいと思っていたからだ。中国に日系企業を作れば日本人は指導的な立場となり、会話は通訳を通して日本語で行われる。日本の企業と一緒に仕事をしたい中国のローカル企業は、日本語通訳を用意する必要があった。仕事は日本人主導で進んでいき、その結果、日本人の態度も自然と上から目線になってしまう。
しかし、現在は異なる。今や中国政府が積極的に日系企業の中国誘致を進める時代ではなく、指導的な立場で仕事をする日本人であっても、中国人と協力し合うことでメリットを見いだせる“対等な立場の協業者”にすぎない。決して「日本人が教えてあげる」という立場ではないのだ。
筆者が中国に駐在していた2009〜2013年ごろは、日系企業の人気は既に低迷し始めていた。一番の理由は“給料が安い”からである。欧米企業の給料の5〜6割であった。中国の家電量販店においても、かつてはテレビコーナーの一番目立つところに、必ず日本ブランドの製品が展示されていたが、2013年ごろには中国製のテレビに置き変わっていた。
筆者は、そのように変化する中国環境を肌で感じながら、日系企業の日本人の中で、中国人のことを「あいつら〜」と表現をする人が多くいることに違和感を覚えていた。「あいつら、全然分かってないよな〜」などである。
中には「あいつら」の正しい意味を理解できる中国人もいるし、このような言葉を使う日本人は、日頃の態度にも上から目線が現れている。例えば、自分に非があり、それが自他ともに明らかであっても決して謝らないといった態度だ。そのような態度の日本人は、中国人からなかなか認めてもらえない(そもそも、このような態度の人間は誰からも認めてもらえないだろうが……)。
図1は、中国駐在中の購買部の友人(中国人、当時27歳)に、メールである質問をしたときの返答だ。彼は、既に日系企業からドイツ系の自動車関連部品メーカーに転職していた。質問の内容は「日系企業の日本人とドイツ系企業のドイツ人とで、中国人への対応に違いはありますか?」というものだった。
彼からの返答メールの内容は、「日本人が中国人と接する態度は、ドイツ人に比べて尊敬の気持ちが足りない」「その態度は他の国では通用しない」というものだった。図1の最初にある「customers」を「中国人」と読み替えると理解しやすい。彼がドイツ系企業に転職した理由はここにもあったのかもしれない。
中国駐在中に彼と一緒に仕事をしていて、彼は不平不満などを一切口にしたことはなく、いつも穏やかな対応であったため、この返答は筆者にとっては心に突き刺さる内容だった。このメールの内容は、特にアジア圏に駐在している/出張する日本人は、心に刻んでおくべきだ。
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