APICSを活用する――世界有数の企業も認める“洋魂和才”のSCM基盤:生産管理の世界共通言語「APICS」とは(5)(1/6 ページ)
サプライチェーンマネジメント(以下SCM)の体系的な知識を提供するAPICSを専門家が解説していく本連載。5回目は「APICSを活用する」価値と効果について解説する。
グローバルサプライチェーンを運営していく上で“世界共通言語”とも見られている「APICS」を専門家が解説していく本連載。前回はSCMに関するグローバルスタンダードとなるAPICS資格制度の「CPIM」について解説したが、今回は「APICSを活用する」ことで何が得られるのかを解説する。
APICSの知名度
7〜8年前、某日系大手電機メーカー幹部を訪問した際にこうしたことを問われた。
「CPIM? どれくらいハッタリの利く資格なの?」
日本におけるAPICSの知名度の低さを示す例だといえるだろう。実際に日本語だけで仕事が完結する人にとって、少なくとも“日本の現時点”では、APICSは資格取得や教育の受講が即座に大きな意味があるとは考え難いのが現状である。
しかし、一歩日本の外に出ると、その景色は一変する。製造、流通を問わない、サプライチェーンマネジメント(以下SCM)に関わる幅広い業務の理解・説明・ディスカッションで、APICSの知識体系とボキャブラリーは、想像を超える大きな効果を発揮することだろう。例えば、要員の知識水準の向上を通じた通常業務の改善、業務改革・システム導入などのプロジェクトにおける業務設計・効果測定に寄与する。さらにAPICS資格取得者は、就職、昇進、昇給面で有利な立場となる。このような違いが“日本の現時点”と“世界の現時点”にあるといえる。
著者自身の例を紹介しよう。2015年8月、マレーシアで自社製品の商談があった。商談の終わり際、商談先のゼネラルマネジャーから次のような問いを受けた。
「この製品でRCCP計画を立案することは可能か?」
「RCCP」とは「Rough-cut Capacity Planning」の略語で、Master Production Scheduling(基準生産計画)の立案結果を踏まえた能力計画と調整業務である。しかし、ほとんど日本人は、その中身を正しく理解できていないのではないだろうか。しかし、CPIM資格取得者にとっては、基本的な用語だ。著者は即座に「はい、もちろんです」と即答。エンジニアの業務理解力・構想力も奏功し、2015年12月、無事、商談先から発注を得ることができた。
このように、APICS資格はこうしたSCMに関わる業務をグローバルで瞬時に正しく理解・説明する上で効果を発揮する。さらには在庫削減やM&A後の業務整理・設計など、幅広い側面で大きな役割を果たすことを、多くの企業が実証してきた。今回は「APICSを活用する」と題し、APICSの資格・教育体系と、その効用・事例を取り上げ、APICS活用の価値を解説する。
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