不公平な提案を受諾する際の脳内抑制メカニズムを解明:医療技術ニュース
情報通信研究機構は、交渉の場でヒトが不公平な提案を受け入れる際、脳の背側前帯状皮質が不快な感情を抑制することで意思決定する脳内メカニズムを特定した。
情報通信研究機構は2026年2月9日、ヒトが不公平な提案を受け入れる際、脳の背側前帯状皮質が不公平への感情を抑える役割を担っていることを解明したと発表した。63人の参加者を対象としたfMRI(機能的磁気共鳴画像法)実験により、背側前帯状皮質が腹外側前頭前野を介して情動に関わる扁桃体の活動を制御する仕組みを特定した。
研究では不公平さが異なる7パターンの分配を提案するゲームを用い、参加者が自分に不利な分配案を受け入れるか拒否するかを選択する際の脳活動を計測した。その結果、参加者にとって不利な提案ほど拒否率は高くなった。また極めて不利な提案では、条件を受け入れる人の方が拒否する人よりも反応時間が長く、不利な条件を受け入れる際は単なる「報酬の最大化」以上に複雑な意思決定プロセスが働く可能性が示唆された。
計算モデルDDM(ドリフト拡散モデル)を用いた解析の結果、不公平な条件をより受け入れる参加者ほど、不公平に対して背側前帯状皮質が強く反応することが明らかとなった。さらに、このとき腹外側前頭前野は背側前帯状皮質と負の結合度を示し、両者の結合度から、各参加者が不公平な提案を受け入れる割合と反応時間の両方を予測できることが示された。結合度がマイナスの大きな値をとるほど、不公平な提案を迅速に受け入れる傾向にある。
(A)不公平な提案を受け入れる参加者ほど不公平に対して反応する脳領域(背側前帯状皮質)。(B)Aの脳領域と負の結合度を示す領域(腹外側前頭前野)。(C)背側前帯状皮質と腹外側前頭前野の結合度と不公平な提案の拒否率および(D)反応時間[クリックで拡大] 出所:情報通信研究機構
さらに、不公平な提案が示されたとき、脳内で不快な情動と関わるとされている扁桃体と腹外側前頭前野が同期することも確認された。
これまで、不公平な提案の受諾は単なる報酬の最大化として説明されてきた。しかし今回の研究により、実際には背側前帯状皮質が腹外側前頭前野と連携し、扁桃体で生じる不公平への不快な感情を能動的に抑制するという複雑なプロセスが働いていることが明らかになった。
今後は、特定された脳活動の働きを変化させた際に行動が実際に変わるかという因果関係を検証する。今回の成果は、交渉における不必要な対立の抑制や、納得性の高い分配制度の設計に貢献する可能性がある。
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