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テルモが英社買収で臓器移植市場に本格参入、鮫島CEO「こんな買収めったにない」製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

テルモが臓器保存デバイスを手掛ける英国のスタートアップOrganOxの買収の狙いについて説明。同社の買収により、テルモは成長市場である臓器移植関連分野に本格参入することになる。

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テルモの鮫島光氏
テルモの鮫島光氏

 テルモは2025年8月27日、東京都内で会見を開き、同月25日に発表した臓器保存デバイスを手掛ける英国のスタートアップOrganOxの買収の狙いについて説明した。同社の買収により、テルモは成長市場である臓器移植関連分野に本格参入することになる。

 テルモによるOrganOxの買収価格は15億米ドル(約2220億円)。同社と投資企業などの株主から発行済み株式100%を現金対価で取得する。契約締結日は2025年8月23日。買収資金は手元資金および負債で調達する予定だ。

 テルモ 代表取締役社長CEOの鮫島光氏は「2024年4月のCEO就任時から掲げてきた、大胆なプラスアルファによる中計『GS26(Growth Strategy 2026)』を上回る成長の実現に向けて、非常に重要なステップになる。テルモが長年にわたって培ってきた技術力と専門性にOrganOxの革新的なデバイスとノウハウが融合されることによって、世界中の待機患者に対する臓器移植の機会拡大が可能となり、臓器不足という深刻なアンメットニーズに対してグローバルに貢献できると考えている」と語る。

テルモによるOrganOx買収の戦略的意義
テルモによるOrganOx買収の戦略的意義[クリックで拡大] 出所:テルモ

 また、臓器移植という高成長市場への本格参入と高収益なビジネスモデルの獲得や、テルモの既存事業とのシナジーを生かした新たなソリューション創出によって「テルモグループ全体の価値最大化に寄与する買収案件であると確信している」(鮫島氏)という。

 2008年にオックスフォード大学からスピンアウトする形で創業したOrganOxは、臓器提供者(ドナー)から摘出した移植用臓器を従来よりも長期間保存できる臓器保存デバイス「metra」を展開している。2021年に肝臓用のmetraがFDA(米国食品医薬局)の承認を取得したことを契機に事業を急速に拡大しており、2023年に営業黒字化、2024年には売上高5522万6000ポンド、営業利益713万9000ポンドとなり営業利益率は17%に達している。

OrganOxの概要
OrganOxの概要[クリックで拡大] 出所:テルモ

 鮫島氏は、今回のOrganOxの買収が極めて優良な買収案件であることを強調した。「買収ターゲットを選ぶ上では5つのクライテリアを重視している。1つ目は技術の真正性で、その技術が本当に医療に貢献しているのかどうか。2つ目は競争優位性で、簡単にまねできないような技術やビジネスモデルを構築できているか。3つ目はテルモとのシナジー。4つ目は、成長性や収益性といった財務の魅力。そして5つ目がテルモとの企業文化の親和性になる。これら5つを満たす会社がめったにないが、OrganOxは全て満たすまれに見る案件であり、私自身とてもワクワクしている。後年振り返った時にも、あの買収は見事だったと評価してもらえると確信している」(同氏)という。

 なお、テルモはOrganOxのmetra向けに2017年からCDI(連続血液ガス分析)システムを提供してきた関係にある。その上で2025年3月にテルモのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるTerumo Venturesから出資しており、それから約半年での買収となった。

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