オリンパスが内視鏡手術ロボット開発へ、米国で投資会社と新会社を設立:ロボット開発ニュース
オリンパスは、エンドルミナルロボティクスの開発を加速するため、米国の医療業界特化の投資会社であるリバイバルと契約を締結したと発表した。両社は同契約に基づき、米国に新会社「スワン・エンドサージカル(Swan EndoSurgical)」を共同で設立する。
オリンパスは2025年7月25日、エンドルミナル(Endoluminal:腔内)ロボティクスの開発を加速するため、米国の医療業界特化の投資会社であるリバイバル(Revival Healthcare Capital)と契約を締結したと発表した。両社は同契約に基づき、米国に新会社「スワン・エンドサージカル(Swan EndoSurgical)」を共同で設立し、将来の消化器医療における革新的なロボットシステムの開発に取り組む方針である。
スワン・エンドサージカルは、消化器内視鏡と比べてより低侵襲な治療を可能にするエンドルミナルロボティクス製品の開発を事業内容とする。オリンパスとリバイバルはスワン・エンドサージカルの設立に向けて共同で6500万ドル(約96憶円)を出資した。出資比率はオリンパス45%、リバイバル55%。なお、スワン・エンドサージカルの本社はリバイバルと同じく米国テキサス州に置く。従業員数は約20人である。
消化器内視鏡検査は、消化器がんなどの病変の早期かつ正確な診断に貢献してきた。診断に加え、消化器内科医などの専門医が、内視鏡から挿入した処置具を用いて、がん切除などの内視鏡治療も行っている。しかし、従来のマニュアル操作による内視鏡検査や治療には限界があり、術者の高い技術力が求められるため、世界的に広く普及しているとはいえない状況にある。
スワン・エンドサージカルが手掛けるエンドルミナルロボティクスは、消化管内で容易に操作でき、アームを柔軟に動かせることから、より多くの患者が安全かつ効果的な治療の恩恵を受けられるようになると期待されている。消化管内の病変や腫瘍に対して、従来の治療法と比べて早期に、安全かつ効果的な治療を行うことに貢献する他、他の多くの疾患領域にも応用できる可能性があるという。
オリンパス 取締役 代表執行役 社長兼CEのボブ・ホワイト氏は「このパートナーシップは、エンドルミナルロボティクスを進化させるという当社の戦略を前進させる重要なマイルストーンである。医師の手技の可能性を広げ、消化器医療を再構築する上で重要な本協業を開始できることを大変うれしく思う。この分野において、今後、より多くの患者のアウトカム向上に貢献する革新的な治療が可能になると期待している」と述べている。
消化器内視鏡で世界シェアトップのオリンパスは、AI(人工知能)やロボティクスの活用による消化器内視鏡の次世代技術の開発に取り組んでいる。2021年12月の投資家向け説明会では「次世代の治療法として期待されるエンドルミナル技術の研究」として、エンドルミナルロボティクスのイメージを示していた。
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