同じ機械なのに1号機はOK、2号機はNG 設計者を悩ませる“再現しない不具合”:冴えない機械の救いかた(1)(4/4 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第1回は、同じ図面で製作した複数台の直動パーツフィーダーにおいて、ボルトが1週間で折れたり折れなかったりするという、再現性のない厄介な事例を紹介する。
本シリーズの構成
連載「冴えない機械の救いかた」は、機械の失敗事例や、設計時に注意すべき点をCAE解析と計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していくシリーズです。最初からメカニズムが分かっていて、失敗せずに設計した例もありますが、失敗事例の方が「ウケがいい」ため、失敗したという設定で書くものも少し混ざっています。本シリーズでは、以下のような内容を取り上げていきたいと思います。
同じ機械が数台ある。ある機械は性能が出ない。
ある機械のボルトは1週間で破断した件:1例目
- 総理大臣が「1日100万人分を供給する」とテレビで言っていた件
- パーツフィーダーとは
- AMラジオは共振回路だ
- AMラジオの選局ダイヤルが回せない。でもオールナイトニッポンが聞きたい
- ボルトが折れる/折れないの理由は糸魚川
- 本件の理由を説明するために、次の「ばね−マス系」(初心者向けにリライト)を読んでほしい
- 「尺を稼いでいる」なんて言わせない
ばね−マス系(初心者向けにリライト)
- オイラが設計したメカには、ばねもダンパーも付いてない。どうして「ばね−マス系」を読まなきゃならないんだ
- 以降の記事では、ばね−マス系が頻出
- ばね−マス系:本論
- 振幅の決まり方
- 剛性向上は振動対策の万能策
均一に加圧できる金型がほしい 平面度を上げても均一加圧は達成しなかった
- 光の波長より短い微細加工できるナノインプリント
- いろいろやったが均一加圧できない
- 感圧紙で測定した加圧力を数値化しよう
- 本命と穴馬の逆転、ANSYS恐るべし
- ミイラ取りがミイラになっていた
ボルト破断事例:9例のうちの最初の5例
- 「あなたが落したボルトは金のボルトですか? それとも疲労破断するボルトですか?」
- 断面観察は必須、ディンプルとストライエーション
- ボルト1本の許容繰り返し荷重:
トルク管理しなかった場合とボルトが緩んだ場合 - ボルト1本の許容繰り返し荷重:
トルク管理した場合や定期的にメンテナンスしている場合 - ねじの文献はボルト1本の話。ボルト2本構成のときは荷重2倍でいいのだろうか?
弱い部分が1箇所でもあると台無しメカになった例
- 液晶レーザーリペア装置
- CP制御(Continuous Path Control)とは
- レーザー光を走査して照射したいのだが、千鳥足で歩いている
- 2D CAD時代、「オマエ、縦線、縦線、横線、横線、トリム、トリム、トリムで構想図を描いただろ」
- レーザーリペア装置を設計し直そう
- シール塗布装置の振動対策例(初心者向けにリライト)
直動ガイドのレイアウト失敗例
- メカトロ機器を素早く動かしたい。生産性向上と品質向上のせめぎ合い
- メカトロ機器の構成パーツは案外軟らかい
- 直動ガイド:1本使いの弱点
- 直動ガイド:2本使いの弱点
- 直動ガイド:4本使いにするのではなく、レイアウトで問題解決
- XYテーブルは一式外注するのではなく自分で設計しよう。5軸構成を3軸にした例
同じ機械が数台ある。ある機械は性能が出ない。
ある機械のボルトは1週間で破断した件:2例目
- 超音波溶接機:超音波が溶接しているわけではない
- 号機ごとで溶接強度がばらついたり、ボルトが折れたり、全然順調だったり
- これも共振回路だ
- 溶接が付いたか、付かないかだけで装置の調整をしていた
- 二正面作戦で対策
- 機器調整の基本は計測、判断材料は計測データ
疲労破断対策の失敗事例:2件
- 疲労破断対策:溶接構造にしたら……
- 溶接したらどれくらい疲労強度が落ちるのだろう
- 形状を変えずに焼き入れ品に変えてもダメなんだよな
- 破断までの荷重数が107回以上だったら、あと少し
ボルト破断事例 9例のうち残り4例
- ボルトの疲労破断の予測法(初心者向けにリライト)
- ボルト2本構成でも形が変われば強度が変わる
手計算、ボルト規格の限界 - ボルトの回転緩み止めは簡単な話
- 回転止めをしたけど破断した例
- 回転量の有無ではなく軸力を管理すべきなのでは
- メンテナンス時に冷や汗タラリ。打ち抜き金型のボルトは1本ずつ折れていく
- ボルトが10本だからといって許容荷重は10倍にならない
板金曲げ加工品 曲げRを十分とったのに……
- 応力集中係数αと切欠係数βのおさらい(初心者向けにリライト)
- 板金曲げ加工品の疲労き裂
- ステンレス鋼の板金曲げ部品に続く
SUS304物語
- SUS304は錆びるし磁石に引っ付く事例:3件
- 磁性部品は絶対使えないMRI装置
- 「この部品マグネットに引っ張られている感じがしますよ」
- SUS304は磁石に引っ付く。信じられないのならM4座金を磁石に近づけてみよう
- 「高橋さん、事務所にいらっしゃい」 製鉄メーカーに教えてもらったこと
- ステンレス鍋を買うときのポイント
- 詰まるところ、曲げた箇所、溶接箇所は錆びるし磁石に引っ付く
- SUS304物語残り1件、足し算が合わない「計測器メーカーは助けてくれない」に続く
計測器メーカーは助けてくれない(その1)
- 足し算が合わない。渦電流変位計の測定誤差
- 測定器を疑うときは、メーカーに電話する? それとも自分でやる?
- 渦電流変位計の原理
- 答えの分かっている測定対象を作ろう
自分で校正するんだ - ステンレスパイプの過去の履歴
計測器メーカーは助けてくれない(その2)
- メカトロ機器はセンサーが命
- 理想的な面までの距離をレーザー変位計で測ったのだが凸凹している
- ガラス板とレーザー変位計の相性
- 測定原理を知り、対策を立てよう
- やはりガラス板の表面は理想的な平面であった
床からの振動遮断は難しい 低周波振動絶縁の失敗事例
- ばね−マス系を使った振動絶縁(初心者向けにリライト)
- 振動絶縁失敗事例:ググって買った防振ゴムで解決するのだろうか?
- これまた周波数分析が必要だが、周波数分析の話は後で
- 床からの振動遮断の難しさの理由
- 床振動遮断:設計事例
- もっと簡単、低コスト、リードタイムなしの解決法もある
騒音/振動対策に周波数分析(FFTアナライザー)がなぜ必須なのか
(必要ではなく必須です)
- フーリエ変換と周波数分析(初心者向けにリライト)
- ばね―マス系(説明済みなので割愛)
- 調整用位置決め装置:S字カーブ制御
- S字カーブ制御で簡単に解決してしまったので、少し掘り下げてみよう。対策効果の事前予測だ
騒音対策の必須科目
- 騒音対策を説明。周波数分析はなぜ必要か?
- 騒音計の使い方
- 騒音のいろいろな量
- 振動のいろいろな量
- 振幅と周波数を読み取ろう
- 音圧波形からデシベル値を計算
- 練習問題:振動変位、速度、加速度の計算
- 音圧の和、騒音レベルのデシベル値を足し算してはいけない
- 実効値とオーバーオール値
- デシベル値の足し算
- 音源探し、振動源と音源は違うことがある
騒音対策:遮音材の選び方と失敗例
- 周波数分析(説明済みなので割愛)
- 音源探し、振動源と音源は違うことがある
- 遮音の質量側(再掲なので結果のみ)
- 遮音材の選定法
- 遮音対策効果の予測
騒音予測計算Excelシートを作ろう
騒音対策:吸音材の選び方と失敗例
- 吸音材とは(初心者向けにリライト)
- 吸音材の選定失敗例
- 吸音材の効果の予測
騒音予測計算Excelシートを作ろう
MRI装置の騒音対策
- 強烈なローレンツ力
- 電流の周波数成分
- 行き詰まった末の騒音対策
- ここに銅箔を貼ったらダメじゃん
インバーター駆動装置は音がうるさい
- インバーターエアコンが世に出る前のエアコンもうるさかった
- 昔の洗濯機の静音化
- インバーター制御、PWM駆動、デジタルアンプ
- インバーター時代の洗濯機の騒音対策
騒音対策のためにやった振動測定の失敗事例
- 粒子速度の概念
- 波動方程式(シュレディンガーではない方)
- 音源の振動と音圧
- 加速度ピックアップ測定データを加工しよう(再掲)
モーダル解析は2つある
- CAE解析のモーダル解析と実験モーダル解析
- CAE解析のモーダル解析は得るものが少ない。ハンマリングでの実験モーダル解析も得るものが少ない
- 通電時の実験モーダル解析がいいかも、スローモーション表示もいい
- 実験モーダル解析とスローモーション表示を自分でやってみよう
冷却系の失敗事例
- 水漏れ発生
隣の課長さんの声「オマエら、夏休みなしだ」 - やっぱりシミュレーションが必要だった
- 「夏休みなし」は2回経験しております
- 「タンジェント・デルタ」が大きくなっているんだよ
シミュレーションと実験値とを一致させよう
- 騒音/振動対策は伝達関数で考える
- シミュレーション条件を精緻にしても一致しない例
- やっぱり、設計者と解析専任者と実験担当者は同一人物であるべきだ
以上となります(スゲーいっぱいあるけど、最後まで書けるのかな……)。
「尺を稼いでいる」なんて言わせない
最後にもう一度だけ言わせてください。「尺を稼いでいる」とは、楽をして字数を増やすことだと思っています。では、バリコンを説明するために、わざわざ3D CADでバリコンをモデリングしたり、マウスをポチポチしながらWordでアナログ回路図を描いたりすることが、「尺を稼いでいる」といえるでしょうか。その判断は、読者の方々にお任せしたいと思います。
それでは、次回、ばね−マス系に続きます! (次回へ続く)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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