コンタクトをつけるだけで眼圧を測定、緑内障の早期発見へ:医療機器ニュース
早稲田大学らは、ソフトコンタクトレンズで眼圧を高感度に無線計測する技術を開発した。新回路の採用により従来比で約183倍の感度を達成した。緑内障の早期発見や在宅モニタリングへの貢献が期待される。
早稲田大学は2026年1月14日、ソフトコンタクトレンズに歪センサーアンテナを搭載し、眼圧を高感度に無線計測できるスマートコンタクトレンズを開発したと発表した。パリティ・時間(PT)対称性共振結合回路と統合した新回路により、従来方式の約183倍に相当する36.333Ω/mmHgの感度を達成。可視光透過率80%以上の透明性と生体安全性を両立し、緑内障の早期診断や在宅管理への応用を見込む。山口大学との共同研究による成果だ。
今回開発したスマートコンタクトレンズは、導電性高分子(PEDOT:PSS)と接着性高分子(PVA)による多層構造抵抗センサーを、市販のソフトコンタクトレンズ上に統合したものだ。電気メッキを活用した微細加工技術により、無線歪センサーアンテナは伸縮性を持ち、レンズが乾燥しても剥離しない。眼圧変化に伴うレンズの微細な形状変化を抵抗値として検出する。
計測システムには、受動共振回路であるレンズ側に対し、読み出し側の受信機回路に負性抵抗素子を組み込んで損失を能動的に補償するPT対称性の概念を導入した。これにより、共振ピークの鋭さを示すQ値が従来の15.71から339.15へと大幅に向上した。
豚眼を用いた試験では、6〜36mmHgの眼圧範囲において、実数インピーダンスの絶対値変化量が従来比で数百倍に達した。
性能検証では、豚眼を用いたin vitro実験で決定係数R2=0.93、ウサギを用いたin vivo実験でR2=0.97という、市販の眼圧計との高い線形相関を確認した。また、ヒト角膜上皮細胞を用いた試験では細胞生存率90%以上を示し、高い生体適合性を実証している。
国内の失明原因第1位である緑内障は、夜間に進行しやすい特性を持つため、24時間の連続計測が求められている。これまで開発が進められていた眼圧計測デバイスは硬い素材による装用感の悪さや高価格が課題だった。今回開発したスマートコンタクトレンズはソフトレンズを基盤とするため、セルフケア用デバイスとしての普及が期待される。今後は臨床試験に向け、レンズ製造や無線検出器の開発を担う企業との連携を進める方針だ。
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