小さな球をポンっと飛ばしてキャッチする「ボールキャッチ玩具」の仕組み:100円均一でモノの仕組みを考える(16)(3/3 ページ)
本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解/観察して、その仕組みや構造を理解しながら、製品開発の過程を考察していきます。連載第16回のお題は、レバーを引いてボールを飛ばし、相手のカップでキャッチする「ボールキャッチ玩具」です。
中空構造のボールに込められた工夫
前述した通り、ボールキャッチ玩具の肝は、レバーを握るとボールが飛ぶ仕組みにありますが、実はボール自体も重要な要素となります。手に取ると驚くほど軽いこのボールは、内部が空洞の「中空構造」をしています。
運動エネルギーは、
で表されます。板ばねが解放するエネルギー(弾性エネルギー)Eが一定である場合、質量mが小さい(ボールが軽い)ほど初速vを大きくでき、ボールを高く、遠くへ飛ばすことが可能になります。
また、質量を極限まで減らすことで、万が一顔などに当たった場合の衝撃力(運動量)を小さくでき、安全性の面でも有利になります。
この薄肉で軽量な中空ボールを一体成形で実現するために用いられているのが「ブロー成形」です。材料となる樹脂を金型内にセットし、高圧の空気を吹き込みます。これにより、樹脂が金型の内壁に押し付けられ、内側が空洞のまま均一な薄肉の球体が成形されます。
成形されたボールをよく観察すると、小さな穴があります。この穴がエア注入口の跡になります。また、ボールの中心部分には金型の分割面(パーティングライン)も確認できます(図8)。
今回取り上げたボールキャッチ玩具は、昔ながらのおもちゃで、100円で入手可能な安価な製品ですが、「ボールを弾き出すためのエネルギーをどう蓄え、どう解放するか」という課題に対し、最小限の部品数で明確な解を示しています。
この「機能を維持しつつ、要素を徹底的に削ぎ落とす」というアプローチは、われわれエンジニアが日々の設計業務で行っている最適化に通じるものがあります。シンプルな構造の中に、エンジニアリングの原点を見ることができました。 (次回へ続く)
著者プロフィール:
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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