富士通、藻場のブルーカーボンを100倍速かつ高精度に定量化する技術を開発：製造マネジメントニュース

富士通は、藻場のブルーカーボンを従来比100倍の速度と85％以上の精度で定量化できる海洋デジタルツイン技術を開発した。同技術により、Jブルークレジット認証を95％の認定率で取得している。

[MONOist]

　富士通は2025年11月26日、海洋デジタルツインの研究開発として、海藻、海草によるブルーカーボンを迅速かつ高精度に定量化できる技術を開発したと発表した。

　開発した技術は、水中ドローンによる自動航行制御技術、藻場の定量化技術、藻場創出を事前評価できるシミュレーション技術の3要素で構成される。これらの技術を組み合わせて、これまでは1ha当たり約2日を要していた藻場や干潟などの現状確認作業を、約30分と100倍高速化するエンドツーエンドシステムを構築した。

海洋デジタルツインの構想と開発技術［クリックで拡大］ 出所：富士通

　水中ドローンの自動航行制御技術では、ドローンが海流などの影響を受けながらも指定経路から±50cm以内で自動航行でき、岩礁付近を含めた海中データを漏れなく迅速に自動計測できる。

　藻場定量化技術は、海洋生態学とコンピュータビジョンを組み合わせたもので、海中の濁りのために色や形が不明瞭な画像を鮮明化し、海藻の種類や被度（海藻が海底を覆っている面積の割合）を85％以上の精度で認識できる。複数種の海藻が混在する場合にも対応し、日本の海域の約80％で利用可能だ。さらに、被度などの情報を数理モデル化することで海藻が繁茂するエリアのブルーカーボン量を算出できる。

　藻場創出シミュレーション技術では、海水温や他生物との関係、人工物設置などの要素を踏まえながら、施策の効果を多面的に予測する。これにより、専門家の経験に依存していた藻場保全を、科学的根拠に基づいて計画できるようになった。

シミュレーションによる施策効果の事前検証。左側：施策無。ウニの食害の広がりで藻場が減少し、藻の無い黒いエリアが増加、右側：施策有。漁礁の設置とウニ駆除の施策を実施。全体的に藻場が増加［クリックで拡大］ 出所：富士通

　構築したシステムを用いて、愛媛県の宇和海環境生物研究所や同県漁協、宇和島市と共同で宇和海のブルーカーボンの定量化を実施した。その後、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合にブルーカーボンクレジットの認証、発行を申請したところ、95％の高い認定率でJブルークレジットが認証された。

エンドツーエンドシステム概要［クリックで拡大］ 出所：富士通

　富士通は、自治体や地元企業と協働しつつ、開発した技術を藻場の回復や保全、Jブルークレジットの認証取得に活用し、海洋環境の改善と脱炭素を促進する。また、海洋インフラ点検や海洋工事前の環境調査などにも同技術を適用し、海洋デジタルツイン技術を発展させていく考えだ。

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