パナソニックHDがシーベジタブルと海藻養殖で実証、ネイチャーポジティブを訴求:脱炭素
パナソニックHDとシーベジタブルは、海藻養殖を通じた海の生物多様性の保全や回復に加え、食料問題、健康維持、CO2削減などの社会課題解決に向けた可能性を検討するため、共同実証を行う。パナソニックHDの社員食堂でシーベジタブルの養殖海藻の提供も開始し、ネイチャーポジティブへの理解醸成に取り組む。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)とシーベジタブルは2024年11月15日、海藻養殖を通じた海の生物多様性の保全や回復に加え、食料問題、健康維持、CO2削減などの社会課題解決に向けた可能性を検討するため、共同実証を行うことを発表した。同年11月26日からは、パナソニックHDの社員食堂でシーベジタブルの養殖海藻の提供を開始し、ネイチャーポジティブに対する社内理解の醸成に取り組んでいる。
海藻養殖の生産性向上と、ネイチャーポジティブへの行動変容促進
パナソニックHDは、環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を打ち出し、カーボンニュートラル(脱炭素)やサーキュラーエコノミー(資源循環)に加え、ネイチャーポジティブ(自然再興)にも積極的に取り組む方針を示している。
一方、シーベジタブルは磯焼けで減少しつつある海藻を環境負荷の少ない陸上栽培と海面栽培を行い、その食べ方や活用方法を提案する2016年創業のベンチャー企業である。天然の生産量が極めて少なくなっているすじ青のりや、準絶滅危惧種のとさかのりなどの陸上や海面養殖に成功しており、独自の海藻養殖技術や養殖施設を保有している。
今回の共同実証契約で、パナソニックHDが製造業として培ってきたロボット技術やIoT(モノのインターネット)技術などの知見やノウハウを提供し、海藻養殖の生産効率向上の可能性を検討する。また、生物多様性の保全、回復を含めたネイチャーポジティブに対する意識向上ならびに起業家マインドの意識変革を図るための人材交流なども進めていく方針だ。
さらに、シーベジタブルの養殖海藻などの生産物の特性を活用した、パナソニックHD従業員を対象としたネイチャーポジティブに対する受容性や行動変容の調査や分析などにも取り組む。
その取り組みの一環として、シーベジタブルの養殖海藻を定期的、継続的に社員食堂で提供する取り組みを開始する。シーベジタブルの養殖海藻を社員食堂で提供することで、グループ従業員に日本の海域で起こっているさまざまな生物多様性棄損(きそん)の現状や水産業の問題を伝え、社内からネイチャーポジティブへの理解、行動変容を促していく。給食事業会社であるエームサービスの協力を得て、パナソニックHD本社の社員食堂(大阪府門真市)から開始している。今後は、給食事業者の協力企業を増やし、国内の他の社員食堂へ拡大し、従業員を起点とした行動変容をさらに促していく。
パナソニックHDとシーベジタブルの共同実証期間は2024年11月15日〜2025年11月14日の1年間となっており、環境負荷の低減や食料供給の安定化に向けた可能性検討を共同で行う。今回の実証実験を通じて、生物多様性の保全と回復を図るネイチャーポジティブの実践事例としての取り組みを推進するとともに、海藻養殖によるブルーカーボンとしての価値なども検証する。
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