オムロンの血圧計はどう作られる? 自動化と熟練技能が共存する生産ラインへ:スマート工場最前線(2/2 ページ)
オムロン ヘルスケアは、血圧計生産のマザー工場である松阪工場の見学ツアーを開催した。高速自動化技術と熟練の技能が融合する製造現場を公開。世界同一品質を支える「仕組み」作りをレポートする。
【手組み生産ライン】熟練作業員による精密なはんだ付け
モジュールが完成すると、製造ラインは大きく2つのルートに分岐する。「手組み生産ライン」と「自動機ライン」の使い分けだ。
まず案内されたのは、心電計付き上腕式血圧計など、高機能モデルを扱う手組み生産ラインだ。ここでは、機械では困難な微細作業が行われている。例えば、心電図を計測するための電極へのはんだ付けは極めて難易度が高く、オムロン独自の認定資格を持った有資格者だけが作業を行っている。
ラインには10人前後の従業員が並び、リレー形式ではんだ付け、カフ(腕帯)の取り付け、カバーの取り付け、梱包の順に作業を進め、1台ずつ血圧計を完成させていく。組み立てラインでは1台当たり平均12〜13分、最短は3分〜最長で20分ほどを要する。同社の中でも最も多くの作業員が携わる、まさにフラグシップモデルを作るための現場だ。
【自動生産ライン】スタンダードモデルを支えるLCIA
一方、上腕式血圧計(HCR-7104)などスタンダードモデルが作られているのが、自動生産ラインだ。ここでは、オムロンが「LCIA(Low Cost Intelligent Automation)」と呼ぶ自動機を用いている。
先ほどは人手で組み立てていたカフやディスプレイが流れるように取り付けられ、完成品がラインの端へと運ばれていく。最後は人の手によって丁寧に梱包され、製品としての姿が整う。
従来は手作業のみに頼っていたはんだ付け工程においては、自動補正技術を用いることで、一部の製品は自動化している。
【出荷前検査エリア】厳しい検査を受け、ようやく出荷へ
そして最終工程となるのが、出荷前検査エリアだ。松阪工場では、組み立て工程でも、40項目ほどの検査工程を設けている。出荷前検査では、完全にパッケージングされた製品から、検査基準に準拠した形で抜き取り検査を行う。図面と照らし合わせながら、部品の取り付け状態から動作、説明書の封入向きまで厳格にチェックする。もし1カ所でも不備が見つかれば、そのロットの商品は全て戻され、再度組み立てを行う。この最終検査工程は松阪工場の独自認定を受けた、同社の検査員のみが携わっている。
こうして厳しいチェックを受けた製品のみが、全世界へと出荷されていく。
【ベストラインへの道】生産効率のさらなる向上へ
工場内には、通常の生産ラインとは違う特殊なエリアが設けられていた。オムロン ヘルスケアの担当者によると、ここは「生産効率のさらなる向上に向けた、『ベストライン』を目指す専用のライン」だという。
ここでは、部品を取り付ける順番や、ビニールの折り方、保護フィルムの貼り方など、細かく改良した図面を基に、実際に組み立てを行っている。現在は、通常10〜12人で稼働するラインを6人にまで減らすことを目標に、試行錯誤を繰り返している。なお、完成するモノ自体は通常のラインと同じであるため、ここで生産した血圧計も流通している。
同社において、松阪工場は「マザー工場」と位置付けられている。ここで確立された「自動化のノウハウ」や「品質管理の基準」は、そのまま中国やベトナムなどの海外生産拠点へと横展開されている。つまり、松阪で作っているのは血圧計という製品だけでなく、「世界中どこでも同じ高品質な製品を作るための仕組み」そのものである。
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