パナソニックが10年ぶりに彦根工場を公開 最新のモノづくりに迫る:スマート工場最前線(1/4 ページ)
パナソニックは報道関係者にシェーバー事業メイン工場である彦根工場内のモノづくりを公開した。本稿では、同工場で「伝統と未来の融合を図るAI活用と自動化」をテーマに取り組むモノづくり変革の一部を紹介する。
パナソニックは2025年9月11日、彦根工場(滋賀県彦根市)で開催した「シェーバー事業70周年 事業戦略セミナー」内で、報道陣向けに彦根工場内のモノづくりを公開した。同工場内を報道関係者に公開するのは10年ぶりである。本稿では工場内での最新のモノづくりの取り組みについて紹介する。
AI外観検査機と人間作業者のダブル検査で構築する強固な検査ライン
彦根工場のシェーバー生産では樹脂成形に必要な金型/工具を内製し、外刃/内刃製造や刃の品質検査、シェーバーの組み立てなど、モノづくりの上流から下流までを一気通貫で行っている。そんな中でパナソニックは、モノづくり変革の一部として「伝統と未来の融合を図るAI(人工知能)活用と自動化」に取り組んでいる。従来の技術ではできなかった工場内の自動化を最新のソリューションと組み合わせることで可能にし、生産性や品質を大きく向上させている。
その内の1つが外観検査へのAI自動検査機活用だ。彦根工場の外刃の外観検査では熟練作業者の目視検査に加え、AIを活用した自動検査機を工程の中に落とし込んでいる。外観自動検査機は従来も使用していたが、既存の機能だけではどうしても曖昧な判定になってしまう部分があった。この状態を解決するために検査装置へAIを導入し、検査機で曖昧な判定になってしまった画像については熟練作業者が合否判断をし、その画像をAIに学習させることでより精密な判別をできるようにした。これにより熟練作業者とAI自動検査機を組み合わせて強固な品質体制を整えている。作業者の検査内容と検査基準はそのままに、AIと4Kカメラ7台を使用した自動検査機が1300個にも及ぶ小さな穴を一瞬で検査する。
「この装置を立ち上げた当時はうまくいかなかった。現在の装置は2023年頃に完成したが、カメラや光学系技術の進化やAIをはじめとしたソフトウェアの進化、最新の技術を活用できる人材育成がしっかりできたことが大きな要因である。失敗を繰り返してずっとできないと言われ続けてきたが、チャレンジを推奨する社風も合わさって、成果を得られるようになった」(外刃の検査工程の担当者)
ラピュタASRSを導入した彦根工場の自動倉庫
倉庫の自動化も推進している。彦根工場の倉庫ではパナソニック コネクトとラピュタロボティクスと連携して、自在型ASRS(自動倉庫システム)「ラピュタASRS」を導入している。同ソリューションは、QRコードで現品票を読み込むことで、システムと連携したロボットが自動で部品を運び、作業者の負担を減らすことができる。これにより仕掛在庫置き場の効率化や使用面積の削減を進め、ピッキング作業の人的ミスも抑制する。
今後は生産計画の部門と連携しながら、自律走行型搬送ロボットを活用しながら部品の移載や搬送の自動化を目指していく。「これからも倉庫の変革を進めていく。特に、人とロボットの協調させることで、人がモノ運ぶ/載せ替えるといった作業についてバージョンアップをしていく」(自動倉庫の担当者)
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