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ダイキンが目指す止まらない工場、そこで見えてきた課題と新たな取り組みITmedia Virtual EXPO 2025 夏(1/2 ページ)

ダイキン工業では「止まらない工場」の実現に向けて、工場デジタルツインや設備故障予知、画像処理などのデジタル技術を活用し、生産ロス削減やリードタイム短縮につなげている。本稿では、「ITmedia Virtual EXPO 2025 夏」において、ダイキン工業の浜靖典氏が「止まらない工場実現に向けたダイキンのデジタル技術活用」と題して行った基調講演の一部を紹介する。

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 アイティメディアは2025年8月26日〜9月26日、製造業向けの国内最大級のオンラインイベントである「ITmedia Virtual EXPO 2025 夏」を開催した。

 本稿では、「止まらない工場実現に向けたダイキンのデジタル技術活用」と題してダイキン工業 生産技術センター 工場DX技術開発グループ グループリーダー主任技師の浜靖典氏が行った基調講演の一部を紹介する。

「見える化/数値化」「予知/予測」「最適化」でスマート化へ

ダイキン工業の浜氏
ダイキン工業の浜氏

 ダイキン工業は1924年に創業し、現在では空調事業や化学事業を展開している。2025年3月期の連結売上高は4兆7523億円で、海外売上高比率は83%に達した。

 空調事業の売上高は4兆3845億円で海外売上高比率は85%に上る。直近では、開設が相次ぐデータセンター向けのアプライド空調機器の売り上げが米国市場で好調に推移している。

 空調事業の生産拠点は市場最寄り化生産をベースとして、世界28カ国、90カ所以上に広がる。今回紹介したデジタルの取り組みは、主に業務用エアコンを生産する堺製作所臨海工場(堺市西区)のものだ。

 ダイキン工業では「止まらない工場」の実現に向けて、工場デジタルツインや設備故障予知、画像処理などのデジタル技術を活用し、生産ロス削減やリードタイム短縮につなげている。

 臨海工場はビル用マルチエアコンの室外機を生産する1号工場と、店舗用エアコンや圧縮機などを加工し、組み立てを行う2号工場および配送センターで構成されている。その中で、1号工場は老朽化が進んだことなどから建て直すことが決まり、その際に耐震補強や津波対策などとともに、デジタル技術を活用した先進的な設備を採用することになった。


ダイキン工業の堺製作所臨海工場 出所:ダイキン工業

 2018年5月に本格的に稼働した新工場は「工場まるごとショールーム」のコンセプトの下、最先端のモノづくりと環境技術に取り組み「一般ユーザーや国内外拠点からも『ぜひ入れたい』と感じてもらえるような求心力、訴求力を兼ね備えた工場を目指して構築している」(浜氏)という。

 空調機器の需要は、季節や気候などにより需要が大きく左右される。同工場ではそうした変化や変動に強いSCM(サプライチェーンマネジメント)と、カスタマイズ製品でも量産機と同等のコストで生産するマスカスタマイズ生産の実現に向けて、これまで培ってきたダイキン生産方式「PDS(Production of DAIKIN System」の改善とデジタル技術の融合により、生産ロスゼロの「止まらない工場」の実現を目指している。

 具体的には、工場の現場から得られるさまざまなデータをバーチャル空間上に蓄積、再現し、それらにシミュレーションや分析の技術を組み合わせて、現場で起こる問題を事前に予測して管理、監督者に通知する仕組みを構築。それに応じて問題が発生する前に処置、対応を行うというサイクルを回すことで「止まらない工場」を実現する。

 生産中に設備故障や品質不良などの問題が発生すると生産ラインが止まってしまう。これを同社では生産ロスと呼んでいる。この問題発生を事前に予測して、対応する技術者に通知し、事前に対処することで生産自体を止めない形にするのが目指す姿だ。

 ただし、設備や現場から得るさまざまなデータを可視化するだけでは、設備故障などを予測できない。そのため、稼働データに加えて、設備や生産工程に詳しい生産技術者および保全技術者など熟練スタッフの判断基準を数値化し、その判断を組み合わせることで問題を予測する予知アプリケーションを開発した。同アプリは類似の設備や他の拠点にも展開している。

 こうしたデジタル技術を用いた「見える化/数値化」⇒「予知/予測」⇒「最適化」のサイクルを回すことで、スマート工場を実現する方針だ。

 「見える化/数値化」には、設備などに組み込まれたセンサーのデータの見える化に加え、生産ラインでの目視検査の部分に画像処理を採用し数値化したものなども含まれる。そこから得られたデータを使って品質不良などを予知/予測し、最終的にはそれらの不良が発生しないような設備へと仕様を変えるほか、停滞が発生しないような生産計画を立案するなど最適化へのステップへと進めていく。

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