硬化速度はエポキシ樹脂の100倍、常温保管対応の半導体封止材:ケミカルマテリアル Japan2025
三菱ガス化学ネクストは、「ケミカルマテリアル Japan2025」で、熱硬化性乾式成形材料「Vyloglass(バイログラス)」と熱硬化性樹脂コンパウンド「ユピカナイト」の開発品を紹介した。
三菱ガス化学ネクストは、「ケミカルマテリアル Japan2025(Chemical Material Japan2025)」(会期:2025年11月27〜28日、東京ビッグサイト)内の「第8回 先端化学材料・素材総合展」に出展し、熱硬化性乾式成形材料「Vyloglass(バイログラス)」と熱硬化性樹脂コンパウンド「ユピカナイト」の開発品を紹介した。
成形後のオーブン加熱工程も不要
同社は、三菱ガスグループの日本ファインケムと日本ユピカが2024年10月1日に合併した企業で、精密化学品や電子部品、樹脂製品などを展開している。
Vyloglassは、ウレタンメタクリレート樹脂を活用した材料で、半導体基板や集積回路(IC)チップの封止材で採用を目指している。「基板や半導体チップの封止材では現在、主にエポキシ樹脂が活用されている。エポキシ樹脂は硬化時間が長いという課題がある。Vyloglassは、ラジカル重合により連鎖的に化学反応が進むため、硬化速度がエポキシの約100倍だ」(三菱ガス化学ネクストの説明員)。
加えて、常温保管に対応する他、成形後のオーブン加熱工程(後硬化工程/ポストキュア)が不要なため、成形サイクルを短縮できる。「通常のエポキシ成形材料は冷凍保管する必要がある」(三菱ガス化学ネクストの説明員)。
同材料に関しては、基板封止以外の用途では既に一部の顧客で採用されているという。三菱ガス化学ネクストの説明員は「半導体基板やICチップの業界では、エポキシ樹脂を用いた封止材の実績と信頼性が圧倒的であり、性能やコストメリットがあっても材料変更のハードルは高い」とコメントした。
ユピカナイトは、ヨウ素採取後の海底の泥と熱硬化性樹脂をブレンドした液状コンパウンド材料で、原料の泥が水分を含んでいるため、周囲の湿度が高いと吸湿し、乾燥していると放湿する特性がある。泥には水分子が含まれているため、消火作用(難燃性)も備えている。
三菱ガス化学ネクストの説明員は「ユピカナイトの原料には、三菱ガス化学グループの東邦アーステックが海底の泥からヨウ素を抽出する工程で排出される泥を有効活用しているユピカナイトに最大40〜60%程度の泥を配合できる。樹脂と比較して泥は安価なため、その分材料コストを下げられる」と語った。
その上で、「泥が天然素材のため、モノによって硬化時間や保存性/安定性にばらつきがある。現状は具体的な用途が定まっておらず、展示会を通じて用途を模索している」と課題や現状を述べた。
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