コニカミノルタのフィルムがペロブスカイト太陽電池の「弱点」を克服:材料技術(2/2 ページ)
「日本発」の次世代エネルギーとして期待されるペロブスカイト太陽電池。その実用化へのラストワンマイルを埋めるのは、コニカミノルタの「フィルム技術」かもしれない。
コニカミノルタ製バリアフィルムの性能とは
ペロブスカイト太陽電池は、内部への水分の侵入により発電層が劣化する他、量産スケールアップ時に品質が低下することが懸念されている。これらの解決策となるコニカミノルタ製のバリアフィルムは水分侵入を抑制するハイバリア層が形成されている。さらに、同社の機能性フィルム事業で培った生産技術により、量産スケールアップ時でも安定した性能を保てるという。
コニカミノルタ 執行役員 技術開発本部長の岸恵一氏は「シリコン系太陽電池の寿命は20年ほどだが、現状のペロブスカイト太陽電池は5〜10年程度だ。原因は水分侵入による劣化となる。ペロブスカイト太陽電池に使用される一般的なバリアフィルムは『平たん化層とバリア層を交互に積層した構成』だが、当社のバリアフィルムは『平たん化機能付きバリア層とバリア層から成る積層』でハイバリアを実現する。これにより、薄膜化と低コスト化を達成しつつ、高いバリア性能を発揮できる」と説明した。
エネコートテクノロジーズのカルシウム試験で、コニカミノルタの既存バリアフィルム製品の耐久性を検証したところ、3500時間以上の耐久性を有すことが分かった。カルシウム試験は、水分に弱いカルシウム膜の劣化状況を観察し、バリアフィルムの品質(水分を通さない度合い)を評価するテストで、フィルム型太陽電池の場合、2000時間で屋外用途が可能だと判定される。
「当社では、ロールtoロールフィルム事業で長年培った技術や既存のディスプレイ向け生産設備を活用することで、追加投資を抑えつつ迅速に、ペロブスカイト太陽電池向けバリアフィルムの安定量産が可能だ」(岸氏)
今後は、原料供給や製造受託を行うメーカーに加えて、建設会社など最終ユーザーも参入しているペロブスカイト太陽電池市場において、幅広くバリアフィルムを提供する考えだ
岸氏は「急速な成長が見込まれるペロブスカイト太陽電池市場の広がりに合わせて、バリアフィルム市場も2035年に500億〜800億円に達すると想定されている。当社では高機能材料を武器にシェアトップを目指す」と語った。
加えて、「これまで培った技術と設備を活用し、2026年にペロブスカイト太陽電池向けバリアフィルムの量産サンプル提供を開始する」と補足した。
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