コニカミノルタのフィルムがペロブスカイト太陽電池の「弱点」を克服:材料技術(1/2 ページ)
「日本発」の次世代エネルギーとして期待されるペロブスカイト太陽電池。その実用化へのラストワンマイルを埋めるのは、コニカミノルタの「フィルム技術」かもしれない。
コニカミノルタは2025年11月25日、オンラインで「『日本発の技術を導くペロブスカイト太陽電池用バリアフィルム』資本市場/メディア向け説明会」を開催した。同説明会では、エネコートテクノロジーズにコニカミノルタ製のバリアフィルムが供給され、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造に活用されることが明かされた。
2027年にペロブスカイト太陽電池の量産を開始
京都大学発のスタートアップとして2018年に創業したエネコートテクノロジーズは、ミッションとして「身の回りから宇宙まで『どこでも電源』で未来を創る」を掲げている。同社は京都大学で培われた技術開発力を強みに、屋内外で使える小型の太陽光発電モジュールや屋外設置型の太陽光発電設備、車載型のソーラーパネルといった製品の開発を進めている他、これらを柱に「どこでも電源」の普及を目指している。
エネコートテクノロジーズ 代表取締役社長 執行役員CEOの加藤尚哉氏は「屋外設置型の太陽光発電設備と車載型のソーラーパネルに関しては、トヨタグループとともに社会実装に向けて取り組みを進めている」と話す。
ペロブスカイト太陽電池市場への同社の参入方法について、屋外設置型の太陽光発電設備の用途を中心に、ロールtoロール方式で製造できるフィルム型を展開する。「ロールtoロール方式は大量生産や規格品の製造に適している。シートtoシート方式はカスタム品の製造や少量生産で活用する」(加藤氏)。
ペロブスカイト太陽電池は、高い発電性能や柔軟性、薄くて軽いといった特性を備え、宇宙機器や自動車、スマートウェア、電波ソーラー時計、CO2センサーといった用途での活用が見込まれている。
「ペロブスカイトは、結晶シリコンやアモルファスシリコンと比較して、太陽電池としての発電性能や重量、薄さ、柔軟さ、モジュールコスト、システムコストに優れているが、耐久性に課題がある」(加藤氏)
同社ではこれまでに、ペロブスカイト太陽電池のフィルムモジュールで世界最高レベル変換効率である21%超を達成した他、パイロットラインを用いて、実用レベル面積のフィルムモジュール作製にも成功している。さらに、ペロブスカイト/シリコンの4端子タンデム型太陽電池で変換効率30%超も達成した。
「当社では室内の低照度でも発電するペロブスカイト太陽電池の特性を生かして、IoT(モノのインターネット)センサーやアロマディフューザーといったさまざまな用途で使用実績がある。逆に、高照度でも高い効率で発電できるため、トヨタ自動車とともに、電気自動車(EV)などの走行距離を伸ばす目的で、ルーフにペロブスカイト太陽電池を搭載する検証も開始している」(加藤氏)
エネコートテクノロジーズは2025年9月10日、同社が幹事会社となり、薄くて曲がるペロブスカイト太陽電池の開発に向けた産学連合を設立すると発表した。同連合は、トヨタ自動車、日揮、豊田合成などの9社、京都大学、青山学院大学が参画しており、薄くて曲がるペロブスカイト太陽電池の開発と実証で2030年まで協力する。
現在エネコートテクノロジーズではペロブスカイト太陽電池の量産工場の建設も進めている。「同工場は2026年に完成し、2027年に量産を開始する予定だ。2027年の初期量産は屋内/低照度向けのペロブスカイト太陽電池が中心となる見込みだ」(同社 取締役 執行役員CTOの堀内保氏)。
こういった取り組みを進める中で、エネコートテクノロジーズはフィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造で使用するバリアフィルムの重要性への理解を深めているという。加藤氏は「ガラス型ペロブスカイト太陽電池は全体における発電層材料の占める割合が30%未満となる。発電層材料のコストはさほど高くないが、基板やその他部材のコストが相対的に高い。一方、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の場合、発電層材料以外の大部分を占めるのがバリアフィルム(基板を含む)となりコストへの影響が大きい」と述べた。
その上で、「コニカミノルタは、有機ELディスプレイ向けの開発/製造などで培われたハイバリアフィルムに関する実績(技術/知見)を有している。この実績を生かして、圧倒的な耐水性(低い水蒸気透過率)とデバイス適用性(薄膜、曲面追従性)を備えた低コストなバリアフィルムを開発してもらいたい」と強調した。
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