会計不正問題で揺れるニデック、原因は「短期的収益を重視し過ぎる傾向」にあり:製造マネジメントニュース
ニデックは、2025年度第2四半期の連結業績を発表するとともに、グループ会社の不適切会計に対する対応について説明を行った。
ニデックは2025年11月14日、2026年3月期(2025年度)第2四半期(上期累計)の連結業績を発表するとともに、グループ会社の不適切会計に対する対応について説明を行った。
不適切会計で「特別注意銘柄」に
ニデックは海外子会社複数社による不適切会計が明らかとなり、有価証券報告書提出の延期や配当決定の延期などがあり、2025年10月28日に東京証券取引所から特別注意銘柄の指定を受けた。同年9月3日に第三者委員会を設置し、現在も調査を実施中である。さらに同年11月14日には監査法人であるPwC Japanから2026年3月期半期報告書のレビュー結論不表明という報告書を受け取っている。
これらを受け、ニデックでは同年10月30日に「ニデック再生委員会」を設置し、11月14日には改善計画の策定方針を提出し、対応を進める姿勢を見せた。会見の場でニデック 代表取締役社長執行役員 最高経営責任者の岸田光哉氏は「株主、投資家の皆さんに迷惑を掛けた。7月の第1四半期業績速報値の説明以降、直接説明する場が今までなかった点についても謝りたい」と謝罪した。
ニデックの不適切会計は主に5件が明らかになっている。1つ目は、イタリアのNIDEC FIR INTERNATIONAL(FIR)に関する貿易取引上の問題と関税問題があり「モーターの輸出取引に対し、原産国を示すのに違法性があった」(岸田氏)という。2つ目は、ニデックの子会社であるニデックテクノモーターの中国子会社において、サプライヤーからの値引きに相当する購買一時金(約2億円)に関して不適切な会計処理が行われたというものだ。3つ目は、ニデックエレシスにおいて、中国への輸出取引に際して中古品の無償取引における申告価格を正当な理由なく低く関税申告したというものだ。その他は、スイス子会社の輸出取引の誤り、中国子会社の源泉所得税の過少申告などがあったとしている。
これらの5件を含め、第三者委員会の調査は現在も進行している最中で、調査状況によってはさらなる不適切会計が見つかる可能性もある。また、それによって、現在発表されている業績がさらに下方修正される可能性も残されている。岸田氏は「(複数子会社から多発的に不適切会計が見つかる)調査が進むにつれて、全体を取り巻く組織風土の改革が必要だと強く感じた。本質的な原因を特定しつつ対策を進めていく」と考えを述べている。
不正の根幹に「短期的な利益を追求する姿勢」
不正の要因について報道陣から追及を受けた岸田氏はその要因について、以下のような考えを述べる。
「ニデックの企業風土として、短期的収益を重視し過ぎる傾向がある。それが日常の運営の大きな比率を占めており、そこを改めないと良くはならない。そこで企業風土の転換を行っていくことが重要だと考えている。ニデックといえば『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』が三大精神の1つになっているが、この中に『必ず正しくやる』を新たな企業倫理感として付加していきたい」(岸田氏)
これを受けて示した改善計画の策定方針では主に、「コンプライアンス最優先の意識/企業風土の醸成」と「組織、体制の強化」の2点に取り組む方向性を示した。具体的には以下の点に取り組むという。
- 取締役会からグループ内に対する明確なメッセージの発信
- 代表取締役社長執行役員からグローバル幹部に対する明確なメッセージの発信
- 法務コンプライアンス部門の機能強化、権限強化
- グローバルガバナンス体制の強化
法務コンプライアンス部門には、新たに社内弁護士を配置し、専門知識を活用して対応するという。また、グローバルガバナンス体制の強化については、新たにCLO(最高法務責任者)の役職を設け、村上和也氏を登用した。さらに北米拠点に法務コンプライアンス専門家を設置したという。今後は、第三者委員会の調査結果などを受け、2026年1月下旬に改善計画と状況報告書の開示を予定する。
2025年度上期の決算は3つの減損処理で減益に
ニデックの2025年度上期の業績は、売上高は前年同期比0.7%増の1兆3023億円、営業利益は同82.5%減の211億円、税引き前利益は同69.6%減の303億円、中間利益は同58.6%減の312億円と、大幅な減益となった。ただ、これは契約損失引当金364億7100万円、非金融資産の減損損失316億7400万円、仕入先からの求償請求の和解に伴う債務194億9500万円を計上し、主に3つの減損損失があったことが大きい。これらの減損損失を含まない場合は、前年同期比で117億円のマイナスに抑えられているという。
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