日本の半導体産業でチャンスつかむトルンプ、ソフトウェアも重視:工作機械
トルンプの日本法人は、東京都内で事業説明会を開催。半導体産業を中心とする日本市場の拡大と、ソフトウェアによる生産性向上の取り組みを紹介した。
トルンプの日本法人は2025年10月29日、東京都内で事業説明会を開催した。グローバルで売り上げが落ち込む中、日本事業は成長を続けているという。
グローバルで減収も、日本市場は成長を継続
トルンプは1923年にドイツで創業した板金加工機などを製造するファミリー企業で、現在はグローバルで90以上の拠点を持つ。日本法人は1977年に発足し、現在は本社(横浜市緑区)、名古屋オフィス(名古屋市名東区)、宮城テクニカルセンター(仙台市太白区)など9つの拠点を展開している。
欧州の自動車産業の低迷や米国の相互関税を巡る動きは、トルンプの経営にも影響を与えている。トルンプ全体の2024/25年度(2024年7月〜2025年6月期)の売上高は、前年同期比16%減の43億2900万ユーロ、受注高は同7.2%減の42億2800万ユーロだった。
2024/25年度の売上高を国、地域別に見ると、ドイツは前年同期比15%減の7億ユーロ、ドイツ以外の欧州は同11.2%減の10億5500万ユーロ、アジアパシフィックは同13%減の9億7500万ユーロ、米州は同20.3%減の8億5800万ユーロ、その他(EUV関連)が同23.2%減の7億2400万ユーロとなっている。
2024/25年度の売上高を事業分野別に見ると、板金加工が23億ユーロ、レーザー技術が12億ユーロ、半導体リソグラフィ工程向けのEUVレーザーシステムが7億ユーロ、半導体製造プロセス向けのエレクトロニクス関連が4億ユーロだった。
日本はトルンプにとって、アジアでは中国に次ぐ市場となっている。全体の売り上げが落ち込む中、日本法人 代表取締役社長のマイケル・ザムトレーベン氏は「日本は成長を続けており、“そのおかげ”でアジアはまだ13%減に収まっている。正しい戦略に基づいて何年もかけて準備し、ようやく結果を出すことができた」と語る。
成長をけん引する半導体産業、長期投資が結実
日本での成長を支えているのが半導体産業だ。日本における売り上げの4割が半導体産業によるものだという。
トルンプでは2005年にEUV(極端紫外線)の研究開発を始め、米国のCymer(現在はASMLの一部)と協力関係を結んだ。「ファミリー企業であるため、1つの技術、方向性に長年投資できた」(ザムトレーベン氏)。
半導体製造工程は、細かく分けると500〜3000のプロセスがある。その中で、半導体製造装置に使われるプラズマ電源など、多くのプロセスでトルンプは製品を提供している。同社 日本法人 エレクトロニクス事業部長のガブリエル・クルーゼ氏は「われわれは半導体業界で既に一定のプレイヤーになっている」と話す。
ザムトレーベン氏は「機械のハードウェアの部分に関してはある程度コピーもできてしまうが、ソフトウェアの機能性や信頼性に関してはコピーしにくく、新興国のメーカーもカバーできていない。競争力を保つためにも非常に重要だ」と、ソフトウェアの重要性も指摘した。
トルンプでは板金加工向けの生産管理システムとして「Oseon」を提供している。ネットワークでつながった機械の稼働状況などが可視化できる他、受注情報と連携させることで各機械の生産計画を最適化できる。
「日本の中小企業ではまだ機械をネットワークにつないでいないケースも多い。そういったユーザーに対してソフトウェアの関心を高め、生産性を一層向上させる活動もしていきたい」(ザムトレーベン氏)
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