トルンプがエレクトロニクス事業を拡大へ、5年間で板金加工機事業と同規模に:FAニュース
板金加工機大手のトルンプは、半導体製造装置向けプラズマ電源や産業用加熱ソリューションを手掛けるエレクトロニクス事業の国内展開に注力する。5年後の2028年には、国内において板金加工機事業と同等の売上高まで拡大させる方針だ。
板金加工機大手のトルンプ(TRUMPF)は2023年10月27日、東京都内で会見を開き、半導体製造装置向けプラズマ電源や産業用加熱ソリューションを手掛けるエレクトロニクス事業の国内展開に注力する方針を説明した。2024年6月をめどに人員を大幅に拡充する他、2023年12月には数億円を投資して現行の3倍以上の作業規模を持つ宮城テクニカルセンター(仙台市太白区)にサービス拠点を移転するなどの取り組みを進めて、5年後の2028年には国内において板金加工機事業と同等の売上高まで拡大させる方針だ。
ドイツでの創業から100周年を迎えるトルンプは、2023年6月期の売上高54億ユーロ(約8530億円)のうち約半分を占めるのが板金やパイプの加工機を手掛けるマシン事業だ。トルンプ日本法人 代表取締役社長の高梨真二郎氏は「1977年設立の日本法人も売上高の半分をマシン事業が占め、トルンプと言えば板金加工機というイメージが強い。ただし、ここ数年でエレクトロニクス事業が急激に拡大しており、さらなる成長に向けて投資を行うことを決めた」と語る。
半導体製造装置向けのプラズマ電源が主力製品、SiCで新たな需要も
トルンプのエレクトロニクス事業は、ヒュティンガ(Huttinger)のブランド名で広く知られてきた。1986年にトルンプとヒュティンガの間で協業が始まり、1990年にはヒュティンガはトルンプの子会社となった。日本国内では、1998年にヒュティンガの事業を手掛けるヒュティンガジャパンが設立されている。2013年に社名をトルンプ ヒュティンガに変更した後、2019年にトルンプの日本法人が同社を吸収合併しており、現在はヒュティンガのブランド名は使用していない。
トルンプ日本法人 エレクトロニクス事業部 事業部長の村上晃永氏は「半導体や太陽光発電パネル、ガラス、ディスプレイ、産業用コーティングなどのプラズマ表面処理に用いられるプラズマ電源が主力製品になる。現在、グローバルではCVD(化学的気相成長)やエッチングなど半導体前工程の製造装置向けが売上高の6〜8割を占めている。今後も着実に拡大する半導体市場と合わせて半導体前工程の製造装置の需要が増加する中で、正確で再現性が高く効率的なプロセスを実現する当社のプラズマ電源の引き合いは強い」と説明する。国内には高性能のプラズマ電源の果たす役割が大きいエッチングプロセスをはじめ有力な半導体装置メーカーが多数存在することもあり、同社のプラズマ電源を積極的に提案していく構えだ。
新たな事業機会となっているのが、SiC(シリコンカーバイド)に代表される次世代パワー半導体のウエハー製造プロセスに用いられる誘導加熱(インダクションヒーティング)などの産業用加熱ソリューションだ。併せて、国内にグローバル大手2社があるシリコンウエハー向けでも事業展開を広げていく方針である。
エレクトロニクス事業部の事業拡大に向けて人員と拠点の拡充も進める。2023年初の時点で同事業部の従業員数は14人だったが、2024年6月をめどに大幅に拡充させる。現在、サードパーティーの施設を借り上げて川崎市麻生区に置いているサービスセンターも宮城テクニカルセンターに移転/拡大する。2023年12月8日の稼働を始める同センターは総面積800m2で現行の3倍以上の作業キャパシティーを有しており、約30人が勤務する予定だ。
事業拡大に向けて、半導体製造装置/材料の展示会である「SEMICON Japan 2023」(2023年12月13日〜15日、東京ビッグサイト)への出展も決めた。トルンプ日本法人への事業統合以降では初の出展となる。高梨氏は「5年以内にマシン事業部と同程度の売上高規模に成長させたいと考えている。今回の人員拡充や宮城テクニカルセンターへの投資はその本気度の表れと受け取ってもらいたい」と述べている。
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