強度を95%以上保つCFRPリサイクル技術、rCF不織布は自動車向けにも展開:リサイクルニュース
東レは、炭素繊維複合材料(CFRP)から、強度と表面品位の大半を維持したまま炭素繊維を回収できるリサイクル技術を開発した。この技術で得られるrCFは、バージン炭素繊維と比較して95%以上の強度を保持している。
東レは2025年10月31日、熱硬化性樹脂から成る多様な炭素繊維複合材料(CFRP)を分解し、炭素繊維の強度や表面品位を維持可能なリサイクル新技術と、同技術で得られるリサイクル炭素繊維(rCF)を用いた新たな炭素繊維不織布を開発したと発表した。
炭素繊維不織布の用途としては、自動車、建築、電気電子、日用品など向けの機能材や意匠材としての展開を見据えており、顧客への試作サンプルの提供を開始している。今後、顧客の用途に合わせて、さらなる技術検討を進める。
和紙の風合いを有する不織布を作製可能
CFRPは、航空機や風車などの用途で使用されており、使用済みのCFRPから取り出したrCFは鉄鋼炉の還元剤としてケミカルリサイクルされている。使用済みCFRPを高温で熱分解してrCFを回収/再利用するマテリアルリサイクルの技術開発も進んでおり、射出成形用途を中心に市場が拡大している。他方、用途を拡大するために、rCFの熱損傷抑制と樹脂残渣制御が行え、あらゆる使用済みCFRPに適用できる技術が求められている。
東レは、これまで蓄積してきた有機合成/ポリマー重合の知見を活用し、3次元架橋された難分解な熱硬化性樹脂に対し、従来技術より低温で分解可能な新規分解剤を発見した。この新規分解剤により、航空機、風車、自動車などさまざまなCFRP廃材の分解を実現している。
同技術により得られたrCFの単糸引張強度は、石油由来のバージン炭素繊維に対し95%以上の強度保持率を発現する。また、同技術で生じるCO2排出量は、バージン炭素繊維の製造時と比較し、50%以上の削減が期待できる。
同技術で得られたrCFは、従来のrCFより強度が高く、後加工プロセスでの繊維折損が少ない特徴がある。樹脂残渣が少なく表面品位に優れることから、より幅広い用途への加工も可能だ。
中でも、短繊維を分散させてシート状に加工する不織布への検討を進めた結果、同技術で得られたrCFは、水への分散性が容易に制御できる。そのため、均質形態の不織布や、従来にない和紙の風合いを有する不織布を作製可能だ。
この和紙調炭素繊維不織布を、電波遮蔽(しゃへい)や熱伝導性といった炭素繊維の機能性と、和紙の意匠性を兼ね備えた新素材として、同社は幅広い分野への展開を目指す。なお、同技術と炭素繊維不織布の加工技術は、環境省の「脱炭素型循環経済システム構築促進事業(令和6〜7年度)」の支援で開発されたものだ。
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