コニカミノルタがAI活用「インテリジェント再生材」で再生プラ市場に本格参入、2026年度事業化:リサイクルニュース
コニカミノルタはマレーシアの再生樹脂メーカーと提携し、独自のセンシング/AI技術を活用した再生プラスチック「インテリジェント再生材」の事業化を発表した。2026年度の事業化を目指す。
コニカミノルタは2025年10月8日、オンラインでメディア向け説明会を開催し、マレーシアの再生樹脂メーカーMJ MATERIAL TECHNOLOGY(以下、MJマテリアル)と共同で取り組む、AI(人工知能)技術を活用した再生プラスチック「インテリジェント再生材」の事業化について説明した。
両社はパートナーシップを構築し、2026年春に新設されるMJマテリアルのマレーシア工場でコニカミノルタの技術を活用しインテリジェント再生材を製造して、同年度内に事業化を目指す。インテリジェント再生材は樹脂材料として、電子機器、家電、自動車メーカーなどへの提供を計画している。
なぜ今再プラ市場なのか――アジア市場で10%のシェア獲得狙う
コニカミノルタがこのタイミングで事業化に踏み切る背景には、再生プラスチック市場の高まりがあるという。環境意識の高まりと法規制強化を受け、再生プラスチック市場は年率8〜10%の成長が見込まれており、特に同社が強みを持つ電子機器/家電分野での需要拡大を大きな事業機会と捉えている。
事業展開としてはまず、約500億円規模とされるアジアの電子機器/家電市場をターゲットとし、早期に市場シェア10%の獲得を目指す計画だ。将来は、2031年度を目標に欧州市場へも展開し、約1800億円規模の市場を狙う。長期的には、既に複数の企業から引き合いがあるという自動車業界や、北米への展開も視野に入れている。
ビジネスモデルとしては、コニカミノルタがMJマテリアルへ技術を提供し、MJマテリアルが製造と販売を担う。コニカミノルタは販売収益に応じた技術対価(ライセンス収入)を得る形だ。
AIが品質を安定させる「インテリジェント再生材」とは?
インテリジェント再生材は、主に家電由来の廃プラスチックを活用した再生プラスチック材料だ。これまで再生材の品質を担保するには、純度が高く高品位な廃プラスチック原料に頼る必要があり、供給量が限定されることが課題であった。
そこで、コニカミノルタが独自開発したセンシング/AI技術と、MJマテリアルが持つ高度な選別ノウハウを組み合わせることで、従来は活用が難しかった家電製品などの廃プラスチックからでも、バージン材(新品のプラスチック)に相当する物性/機能を持つ高品質かつ安価な再生材の製造を可能にした。
さらにコニカミノルタは、成形工程のためのAI最適化モデルも新たに開発した。再生材は部品製造時に不良品が発生しやすいという課題があったが、この最適化モデルが部品ごとに最適な成形条件を提案することで、良品を安定して量産できるという。
パートナーとなるMJマテリアルは、2014年にマレーシアで創業した再生樹脂メーカーで、原料回収から開発/生産までを一貫して手掛けている。同社のウェン・ウェンビン社長は、「今回のパートナーシップが、これまで廃棄されていたプラスチックに新たな価値を与え、『廃棄ゼロのクリーンな社会』の実現につながる一歩になる」と期待を述べた。
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