コニカミノルタのトナー除去技術は月の砂にも有効、トヨタと共同開発へ:宇宙開発
コニカミノルタは、トヨタ自動車との間でダスト除去技術に関する共同開発契約を締結したと発表した。トヨタ自動車とともに、同社がJAXAと研究開発を進める有人与圧ローバーに向けた宇宙用ダスト除去装置の開発および開発技術を地上転用する事業化の検討を行う。
コニカミノルタは2025年7月3日、トヨタ自動車との間でダスト除去技術に関する共同開発契約を締結したと発表した。トヨタ自動車とともに、同社がJAXA(宇宙航空研究開発機構)と研究開発を進める有人与圧ローバー(ルナクルーザー)に向けた宇宙用ダスト除去装置の開発および開発技術を地上転用する事業化の検討を行う。
今回開発するダスト除去技術のベースになるのが、コニカミノルタが複合機で培ってきた静電気を帯びたトナーの除去技術である。トヨタ自動車が研究開発を進めている有人与圧ローバーが月面を走行する際には、月の砂であるレゴリスが車体に付着する。
レゴリスは、月表面の岩石から宇宙風化作用によって生成される主にガラス質の微小粒子である。コニカミノルタのダスト除去技術は、車体に付着するレゴリスを除去するのに必要な要素技術の一つとして期待されることから、今回の共同開発契約の締結に至ったという。また、共同開発では、開発技術やノウハウの地上製品への応用、事業化の検討も進める方針である。
なお、米国が1962年に有人地球周回軌道飛行によって宇宙から見た地球の撮影に成功した際に使用したカメラがコニカミノルタの「ミノルタハイマチック」だった。「それから半世紀以上たつが、全く分野の異なる複合機の技術がこのような形で宇宙開発プロジェクトに活用されることは光栄であり、このような機会をいただけたことに大変感謝している。文化も歴史も異なる新しい形の共創による挑戦が、新たな技術の融合を生み、両社の発展と変革につながることと信じている」(コニカミノルタ 執行役員 技術開発本部長の岸恵一氏)という。
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