耐薬品性2倍の逆浸透膜を開発、運転エネルギー10%削減を実現:材料技術
水資源の有効活用が急務となる中、東レ、東麗膜科技(佛山)、東麗先端材料研究開発の3社は、産業廃水の再利用や下水処理に適した逆浸透(RO)膜「TLF-400ULD」を共同開発した。
東レ、東麗膜科技(佛山)(本社:中国広東省佛山市、以下、TMFC)、東麗先端材料研究開発(本社:中国上海市、以下、TARC)は2025年10月8日、産業廃水の再利用や下水処理に適した逆浸透(RO)膜「TLF-400ULD」を共同開発したと発表した。
今後、東レおよび藍星東麗膜科技(本社:中国北京市、以下、TBMC)を通じてグローバル市場への展開を進め、水資源の利用効率向上を目指す。
差圧上昇は従来品と比べて約50%抑制
TLF-400ULDは、東レ独自の製膜技術と流路設計により、従来品と比較して高い塩除去率を維持しながら、透水性と耐薬品性の向上を実現した他、汚れの堆積による差圧の上昇を大幅に抑制することにも成功した。差圧上昇は従来品と比べて約50%抑制している。
加えて、透水性能を従来品と比較して約10%高めつつ、洗浄時の薬品に対する耐久性を従来品と比べ約2倍に向上させることで、膜の劣化による性能低下も抑えた。詰まりにくいエレメント構造の採用により、汚れの堆積を抑制しているため、薬品洗浄頻度の削減にも貢献する。同社の従来品と比べ洗浄サイクルを約50%延長しているので洗浄頻度も抑えられる。
これらの特徴により、運転エネルギーを約10%削減しつつ、安定した長期運転を実現する。運転管理の容易化と膜の交換頻度の削減も期待される。
中国でニーズが高まる水処理膜
世界的に水資源の不足が深刻化する中、幅広い原水に対応可能で効率的かつ環境負荷の少ない水処理技術へのニーズが高まっている。
特に中国では、政府の「循環経済の発展に関する第14次5カ年規画」(2021〜2025年)に基づき、水質汚染対策として水処理膜の需要が拡大している。同計画では、「年間水使用量の上限:全国で6400億m3以内に抑制」「単位GDP当たりの水使用量を2020年比で16%削減」「工業付加価値1万元当たりの水使用量も同様に16%削減」「農業灌漑(かんがい)水の有効利用係数を0.58以上に引き上げ」といった目標を掲げている。
一方、東レはTBMC、TMFC、TARCの3社を中心に、中国国内において研究から技術開発、生産、販売までを一貫して行える体制を整備している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
耐薬品性を2倍に向上し交換頻度とCO2排出量を半減したRO膜を開発
東レは、工場廃水の再利用や下水処理などの厳しい環境で、高い除去性を維持したまま、長期間安定して良質な水を製造できる高耐久逆浸透(RO)膜を開発したと発表した。ステンレスと同等の強度のポリエチレンフィルムを開発、フッ素樹脂代替で展開
東レは「nano tech 2024 第23回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」に出展し、超高強度を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルムを披露した。150℃の耐熱性を持つ高耐電圧コンデンサー用フィルムを開発
東レは150℃で動作可能な高耐熱性を有する高耐電圧コンデンサー用フィルムを開発した。今後、同フィルムのサンプルワーク提供と量産化に向けた検討を進めていく。東レらがモノマテリアルフィルム包装材/技術を開発、CO2排出量を80%削減
東レは、三井化学や熊谷と共同で、フィルム包装材製造工程での揮発性有機化合物のフリー化、従来品比でのCO2排出量80%削減、さらにはリサイクルにも対応する、人と環境にやさしいモノマテリアルフィルム包装材とその製造技術を開発した。東レがマレーシアでABS樹脂の生産増強、グループで年産42万5000トンに
東レのマレーシア子会社Toray Plasticsは、「ABS樹脂トヨラック」透明グレードの生産能力を増強し、本格生産を開始した。既存の東レ千葉工場と合わせると、東レグループ全体の生産能力は年産49万7000トンまで拡大した。