耐薬品性を2倍に向上し交換頻度とCO2排出量を半減したRO膜を開発:材料技術
東レは、工場廃水の再利用や下水処理などの厳しい環境で、高い除去性を維持したまま、長期間安定して良質な水を製造できる高耐久逆浸透(RO)膜を開発したと発表した。
東レは2024年3月21日、工場廃水の再利用や下水処理などの厳しい環境で、高い除去性を維持したまま、長期間安定して良質な水を製造できる高耐久逆浸透(RO)膜を開発したと発表した。
このRO膜は、膜の洗浄時における薬品に対する耐久性を従来比で2倍に向上したことで、膜の劣化による性能の低下が抑えられ、運転管理を容易とする。加えて、交換頻度の半減やカーボンフットプリントの改善も期待できる。現在、同社は量産準備を進めており2024年上期に、市場が急速に拡大する中国での発売を目指し、日本を含むその他の国や地域に向けた製品開発に活用していく。
STEMの解析データなどを活用しRO膜を開発
RO膜は、持続的な水源を確保するための技術として、海水や河川水などの淡水化、廃水の再利用、飲料水の製造など幅広い用途で用いられている。廃水再利用の分野では、多様な水質の水がRO膜で処理されるが、処理性能を維持するために膜の汚れを除去する洗浄薬品の使用頻度が増えることで、膜の孔が変形し、除去性能が低下することが課題となっている。そのためRO膜にはさらなる耐久性の向上が求められるようになっている。
そこで、東レは、グループ会社の東レリサーチセンターが保有する、原子配列を直接観察することが可能な最先端の構造解析技術である走査透過型電子顕微鏡(STEM)とDX(デジタルトランスフォーメーション)によるデータ解析技術を融合することで、RO膜の分離機能層を構成する架橋芳香族ポリアミドの1nm(10億分の1メートル)以下の微小な孔構造を定量的に解析した。
この解析に基づき、同社は洗浄薬品に接触した際の孔構造の安定性に貢献する部分構造を見いだし、製造プロセスの改善を図り、ポリマー構造を新たに設計することによって、安定な孔構造を有するRO膜を開発した。
同社は、今回開発したRO膜を用いて、過酷な薬品洗浄条件を模擬した廃水再利用プラントでの運転試験を行い、得られる水の品質悪化を50%抑制する効果を実証している。
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