炎の貫通を防ぐ遮炎/難燃材、EVのバッテリー向けも開発中:材料技術
東レは「エヌプラス2023」で火にさらされても穴が開いたり破れたりせず炎の貫通を防げる遮炎/難燃材「GULFENG」を紹介した。
東レは、「エヌプラス(N-Plus)2023」(2023年9月13〜15日、東京ビッグサイト)内の「《N+Technology》高機能・高付加価値化の提案」に出展し、遮炎/難燃材「GULFENG(ガルフェン)」を紹介した。
GULFENGはポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維「トルコン」と耐炎化糸から成り、難燃性と遮炎機能を両立した高機能不織布/織編物となっている。火にさらされても穴が開いたり破れたりせず、炎の貫通を防げる。この機能により、その反対側にある可燃物への引火を防げ、遮炎することで熱の伝達も低減する。
遮炎機能の発現メカニズムは以下の通り。まずGULFENGが炎により加熱される。次に、285℃を超えた時点でGULFENG内のPPS繊維が溶融した後、溶けたPPS繊維が膜化し、耐炎化糸を覆う。続いて、耐炎化糸は酸素が遮断された状態で加熱され、吸熱しながらグラファイト構造化し強固な骨材へと変化していく。その骨材の間を膜化したPPSも炭化し、炎を防ぐ炭化膜となる。
加えて、60μmの薄いペーパーから厚手のフェルト、織物と多様な形態での提供に対応し、最終用途に応じて製品形態をカスタマイズできる。
説明員は「GULFENGの用途としては航空機の座席、電気自動車(EV)のバッテリー、ベットマットレス、公共座席向けの耐火材を想定している。現状は航空機の座席のみで採用されている。加えて、採用を目指し、EVのバッテリーや公共座席向けのタイプの開発も進めている。EVバッテリーで耐火材の役割を果たす金属製のケースの素材をGULFENGに変更すれば軽量化も図れる見込みだ」とコメントした。
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