東レの3Dプリンタ用真球PA6の強みは「滑らかな表面」の実現! 最終製品のニーズも:日本ものづくりワールド 2023
東レは、「日本ものづくりワールド 2023」(2023年6月21〜23日、東京ビッグサイト)内の「第6回 次世代3Dプリンタ展」に出展し、3Dプリンタ用真球ポリアミド6「トレパールPA6 ガラスファイバー強化グレード」を披露した。
東レは、「日本ものづくりワールド 2023」(2023年6月21〜23日、東京ビッグサイト)内の「第6回 次世代3Dプリンタ展」に出展し、3Dプリンタ用真球ポリアミド(PA)6「トレパールPA6 ガラスファイバー強化グレード(以下、トレパールPA6)」と3Dプリンタ用ポリフェニレンスルファイド(PPS)「トレミルPPS」を披露した。【訂正あり】
難燃性が評価されJAXAも採用する「トレミルPPS」
トレパールPA6は、独自のポリマー設計技術により、粉末床溶融結合造形(パウダーベッド方式)の3Dプリンティングに最適な粉体流動性を有する樹脂パウダーで、2022年3月に発売されている。強度や耐熱性、耐薬品性に優れ、気密性の高い造形物の制作にも対応する。
説明員は「これまでの粉末床溶融結合造形用のPA6パウダーは、粒子の形状がバラバラだったため、3Dプリンティングで試作品を作成すると、造形物に反りが生じるなどの問題があるだけでなく表面粗度が低く滑らかな手触りを実現できなかった。一方、トレパールPA6は、粒子の形状が真球で統一されているため、3Dプリンティングしても、造形物に反りが生じない他、表面粗度も良好で手触りがよい試作品などを作れる」と利点を話す。
さらに、ガラスファイバーを搭載することで高強度を実現している。「市場では、ガラスビーズが入っている粉末床溶融結合造形用のPA6パウダーが多いが、当社ではトレパールPA6にガラスビーズより強度に優れるガラスファイバーを採用している」(説明員)。
採用実績に関して、インテークマニホールド(内燃機関の燃焼室に空気を取り入れるための多岐管)やオイルストレーナー(エンジンオイルのろ過機)など自動車部品の機能性試作で使用されている。「最近は、高機能性が認められ、トレパールPA6を3Dプリンティングした造形物に着色やケミカルエッジングを施し、最終製品として活用することを検討している企業もある」(説明員)。
トレミルPPSは、独自のポリマー設計技術により、粉末床溶融結合造形の3Dプリンティングに最適な粉体流動性とポリマー特性を備えた樹脂パウダーで、2016年から販売されている。非強化グレード、ガラスファイバー強化グレード、カーボンファイバー強化グレードの3タイプをラインアップしている。各タイプが耐熱性や強度、耐薬品性、難燃性、絶縁性、低吸水性に優れる。
【訂正】初出時にトレミルPPSのカーボンファイバー強化グレードをセルロースファイバー強化グレードとしていました。お詫びして訂正いたします(2023年7月3日)
説明員は「粉末床溶融結合造形の3Dプリンティングに対応したPPSの販売は当社が初で、先行した強みから引き合いを得ている。採用実績に関して、モーターインシュレーターやバスバーなどの自動車部品や電気自動車(EV)のバッテリーケース、配管関連部品などの機能性試作に使われている。加えて、2019年からは、トレミルPPSの難燃性が評価され、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などに採用されており、航空宇宙向け部品の最終製品開発などで活用されている。最近は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)やポリプロピレン(PP)を成形する際の樹脂型の製造で利用されている」と述べている。
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