マツダ初の新規事業は「塗膜耐食性評価サービス」、塗装の防錆性能を数分で測定:材料技術(2/2 ページ)
マツダは、新規事業となる「塗膜耐食性評価サービス」の立ち上げに向けた本格的な事業性検証を実施する。自社開発した塗膜耐食性評価技術が基になっており、数カ月かかる塗装部品の防錆性能の測定を数分〜数十分で定量的に評価できるなどさまざまな特徴を備えている。
塗装に錆が発生するメカニズム
マツダは、自動車の商品力に関わる塗装の防錆性評価手法を改善すべく2017年に開発したのが塗膜耐食性評価技術である。塗装は、大まかに上面の防錆塗膜と下面の素地金属から構成されている。錆が発生するのは、防錆塗膜に付着した水分に含まれる酸素や塩素などの腐食因子が防錆塗膜を透過し、素地金属に到達することに起因している。腐食因子が素地金属に到達した後は、防錆塗膜と素地金属の界面で局部電池が形成され、素地金属が錆びることで防錆塗膜に膨れが発生する。そこを起点に錆/防錆塗膜の割れが拡大して、腐食が進行していくというメカニズムになっている。
マツダの塗膜耐食性評価技術は、腐食因子が素地金属に到達する前と到達した後の2つに分けて行う。到達前は、塗装に電解液を掛けた上で、電解液と素地金属の間で流れる電圧/電流の変化から防錆塗膜の腐食因子の透過しづらさを評価する。到達後については、人工傷に電解液を注入した上で電流制御により防錆塗膜の膨れを促進させ、塗膜の剥がれづらさを評価する。
電気化学的手法を用いる塗膜耐食性評価技術は、従来の防錆性評価である腐食促進試験が数カ月かかるのに対して数分〜数十分で評価が完了するとともに、塗膜耐食性を数値化して定量的に評価することができる。また、腐食促進試験の専用試験機が横幅約3mの据え付け型装置であるのに対し、塗膜耐食性評価技術に用いる測定器は外形寸法が350×260×100mm、重量3kgと小型軽量で持ち運びが可能である。このため、建築物など現地で評価を実施できる点も大きな差異化のポイントになる。
マツダは、塗料開発や塗料選定にかかる期間の短縮、塗装製品の品質管理、橋梁/コンテナ/鉄塔など建築済みの構造体の保全回数最適化や長寿命化といった用途に向けて、塗膜耐食性評価サービスを展開して行く考えだ。
なお、2026年に立ち上げ予定の受託型サービスは、顧客に試験片を送ってもらい、マツダが塗膜耐食性評価サービスによる測定を行ってレポートを作成し納品するという方式になる。需要拡大後を想定するSaaS型サービスでは、顧客に測定器を送って評価対象の測定を実施してもらってからデータをクラウドにアップロードして、マツダが解析を行ってレポートをダウンロードして納品するという形式になる。価格は、受託型サービスが試験片数に応じて、SaaS型サービスは測定回数に応じて設定されるという。なお、先行顧客との有償トライアルでは、コストメリットで高い評価が得られているという。
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