マツダが工場の石炭火力発電をLNGのコジェネに、早期のCO2削減に期待:脱炭素
マツダは自社工場のカーボンニュートラルに向けたロードマップと2030年度の中間目標をアップデートして発表した。
マツダは2025年9月30日、自社工場のカーボンニュートラルに向けたロードマップと2030年度の中間目標をアップデートして発表した。今後の代替燃料の調達環境や技術の進展を見据えてより柔軟に対応しながら、エネルギーの安定調達とCO2排出削減の両立を目指す。
マツダは、省エネと再生可能エネルギーの導入、カーボンニュートラル燃料の活用を組み合わせて2035年に国内の自社工場でカーボンニュートラルの達成を目指す。この目標は維持するが、2030年度の中間目標を修正する。従来は2030年度に2013年度比69%減の削減を目指していたが、同46%減に見直した。この目標は日本政府のロードマップと同等で、脱炭素対策の後退ではないとしている。
マツダは工場の敷地内に火力発電設備を持ち、大部分の電力と全量の蒸気を供給していた。当初は石炭からアンモニアに燃料を転換する計画だったが、本社工場 宇品地区(広島県広島市)では都市ガスを燃料とするガスコージェネレーションシステムに切り替えることを決めた。実用化時期が2030年よりも先になると見込まれるアンモニア専焼の火力発電よりも早期にCO2排出削減効果が得られ、コストも抑えられることから、脱炭素化をより着実に進められるとマツダはみている。
都市ガスの原料となるLNGはサプライチェーンが確立されており、本社工場 宇品地区は広島ガスからの既存のパイプラインを延伸して拡張すれば調達できる。また、石炭からLNGに切り替えることでCO2排出量は半減できるとみている。足元で実現性の高い20〜30%のアンモニア混焼の火力発電よりも、LNGで高効率なコージェネレーションシステムを稼働させる方がCO2排出削減効果が高いと見込む。
導入する川崎重工のシステムはバーナー交換による小規模な改造で水素への切り替えも可能で、水素サプライチェーンの整備の視点に合わせたカーボンニュートラル発電への移行も視野に入れている。川崎重工と協力して、エネルギー利用効率が高く工場の操業に最適なエネルギーマネジメントが可能なガスコージェネレーションシステムの出力や仕様を検討していく。
コージェネレーションシステムでは、発電効率の高いガスエンジンと廃熱利用で効率を高めたガスタービンを使用する。夏季に高まる電力需要と冬季に増加する蒸気需要に柔軟に対応できるシステム構成を検討する。高効率な小型コージェネレーションシステムを複数台導入し、熱需要に合わせた台数を稼働させる。排熱を最大限活用して高効率点で運用する。現行の石炭火力と比べて2倍となる80%の総合効率を目指す。これにより、現在の石炭発電と同等の運用コスト水準を目指す。
本社工場と防府工場(山口県防府市)で稼働中の石炭火力発電は2030年をめどに廃止する。本社工場はガスコージェネレーションシステムを導入するが、防府工場では電気は中国電力から全量を購入し、上記は既設のガスボイラーから全量供給する。
従来の目標は2023年12月に発表した。当初は生産拠点のカーボンニュートラル化を進めなければ欧州への輸出に影響する可能性などに対する危機感もあった。ロシアのウクライナ侵攻が始まって以降、エネルギー価格の高騰や経済成長の鈍化などを背景に欧州ではカーボンニュートラル政策が現実路線に転換しつつある。こうした外部環境の変化を踏まえて、工場のカーボンニュートラルのロードマップを見直した。
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